新編秋田弁講座文法篇第46課：終助詞⑤：「のか」

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文法篇第46課：終助詞⑤：「のか」

　みなさんこんばんは。

　齶田浦蝦夷です。

　今回は、秋田方言の文法の勉強講座の

　第46回目ですね。

　内容は、標準語の「～のか。」に当たる終助詞です。

　終助詞の勉強は感覚的な部分があって大変でしょうが、

　ほとんどの終助詞は対応する標準語と全く同じ使い方をしますので、

　その性質を利用して覚えて行けばいいと思います。

　では講座、開始です。どうぞ。

文法

１．疑問・詠嘆の「～のか」→「～なが」

・「～[用言連体形]のか」→「～なが」と秋田弁では言う。

	秋田弁	標準語
例文①	なに、ん前ぁも来るなが？	え、お前も来るのか？
例文②	んだが。やっぱり寒びなが。	そうか。やっぱり寒いのか。
例文③	なんと、そーおが雨降ったなが!?	おやおや、そうも酷く雨が降ったのか!?
例文④	んだなが。そんでぁに静がﾝだなが。	そうなのか。そんなに静かなのか。
例文⑤	あれ父さんだなが!?	あれ父さんなのか!?
例文⑥	なに、今がらﾝだなが？	え、今からなのか？

説明

１．疑問・詠嘆の「のか」。当テキストでは、「なが」で一語としている。

２．接続は、用言の連体形である。この原則は疑問でも詠嘆でも揺らぐことがない。

３．なお、例文④～⑥は、標準語の訳が「～なのか」なのに対し、秋田弁は「～ﾝだなが」となっている。これは、秋田弁では指定「ﾝだ」と形容動詞の連体形が「ﾝだ」なのに対し、標準語の連体形は「な」であることから来る差異である。

２．疑問・詠嘆の「～の」

・「～[用言連体形]の」→「～な」と秋田弁では言う。

	秋田弁	標準語
例文①	お前ぁも来るな？	君も来るの？
例文②	なした？寒びな？	どうした？寒いの？
例文③	んだな…。そんでぁに辛れぁな…。大変だな。	そうなの…。そんなに辛いの…。大変だね。
例文④	んだな…。そんでぁに静がﾝだな…。	そうなの…。そんなに静かなの…。
例文⑤	あれ父さんだな!?	あれは父さんなの!?
例文⑥	今がらﾝだな？	今からなの？

説明

１．秋田弁の「な」は、本課１で習った「なが」の「が」を省いた形で、その用法は「なが」と全く同じ。よって意味も疑問と詠嘆の二種類ある。

２．接続も、「なが」と全く同じ。つまり、例外なく用言の連体形に接続する。

３．なお、例文④～⑥の標準語訳「なの」に対して秋田弁訳が「ﾝだな」になる点についても、「なが」で説明した通りである。標準語では指定の「だ」と形容動詞の連体形は「な」であるのに対し、秋田弁では、指定の助動詞「ﾝだ」・形容動詞の連体形は「-ﾝだ」であるために生じる差異に過ぎず、原則たる「用言の連体形に接続」から何一つ逸脱していない。

会話

A：わい、雨降ってきたは。とー、めぁ傘持ってきたが？

訳：うわ、雨が降ってきた。父さん、お前傘を持ってきたか？

B：なも、持ってこねぁー。

訳：いや、持ってきていないよ。

A：あい、ほんとにげぁ？そえﾝだば困ったごど。

訳：まぁ、本当にかい？それは困ったなぁ。

B：困ったごどって、…なに、んめぁも傘持ってこねぁなが？

訳：困ったなぁって、…なんだい、お前も傘を持ってきていないのか？

A：あいさ。んだって天気予報ﾝで十パーセントﾝだでもの。そんだ日にだれ傘もってあぐって？

訳：勿論そうだとも。だって天気予報で十パーセントだというからね。そんな日に誰が傘を持って歩くというのだ？

…めぁもそえ聞でだがら持ってこねぁがったあんだべ？

…お前もそれを聞いていたから持ってこなかったんだろう？

B：ははは、なも、おえﾝだばたんだに、おめぁいだごったらおれなも準備さねぁってもいべ

訳：ははは、いや、私はただ単に、お前がいるなら私は何も準備しなくてもいいだろう

どもってなんも持ってこねぁがったﾝだげﾝだ。

と思って何も持ってこなかっただけだ。

A：あい、んめぁもまだいっかけ゚んだ人ﾝだごど。人一緒にいぐがらっておえなんも準備

訳：もう、お前って人はいい加減な人だなぁ。人が一緒に行くからと言って自分が何も準備

さねぁﾝででいでごどねぁべー？なんーだってほんとにめぁﾝだばせやみこぎﾝだごど。

しないでいてよいということはないだろう？まったくもう本当にお前は怠け者だなぁ。

B：なも、そえﾝだげめぁどごあでしてだあんだ。…しかし、おが雨降るねぁが？天気予報ﾝで

訳：いや、それほどお前をあてにしているんだ。…それにしても、酷く雨が降るじゃないか？天気予報で

晴れﾝだどってあったあじ、こーおが外れるもんだがや？

晴れだと言っていたのに、こう酷く外れるものかねぇ？

A：んだがらして。…だﾝども、十パーセントﾝだちゅってあったもの。じんじょすんま

訳：まったくだよ。…だけど、十パーセントだと言っていたからね。きっとあっという間に

晴れるべ。十パーセントってば、場所どが時間によっては降るでごどﾝだべ？

晴れるだろう。十パーセントと言えば、場所とか時間によっては降るということだろう？

B：おや、んだなが？そんだえんだ意味ﾝだな？

訳：おや、そうなのか？そのような意味なの？

A：あー、なも、おえも適当にいってだﾝだげﾝだがら、ほんとﾝだがわがらねぁﾝども…

訳：ああ、いや、私も適当に言っているだけだから、本当かわからないけれども…

だﾝどもせぁ、降水確率低ぎづぎ雨降ってそー長け゚ぁぐ降ったごどもそーねぁべ？

だけどさぁ、降水確率が低い時雨が降ってそう長く降ったこともそうないだろう？

B：んー、なんとﾝであったっけがなー。わがらねぁー。おえなのいっつもめぁかって傘

訳：うーん、どうだったっけっかねぇ。わからないよ。私などいつもお前に傘を

持ってげどってゆわえれば持ってぐし、持ってぐなってゆわえれば持ってがねぁﾝでだ

持って行けと言われれば持って行くし、持って行くなと言われれば持って行かないでいる

もの。

からね。

A：…なに、せばめぁ自分で考えで持ってぐでごどねぁな？

訳：…え、じゃあお前自分で考えて持って行くということがないの？

B：んだな。まずねぁな。

訳：そうだね。まずないね。

A：あい、ねぁなが。あいしかだねぁごど。こんだとしなってまんだ子供みでぁんた考えﾝで

訳：あら、ないのか。まったくもう。こんな歳になってまーだ子供のような考えで

いであったな？そえﾝだばちょっとおがﾝでねぁが？

いたの？それはちょっと酷過ぎではないか？

B：なもなも、かー、おえﾝだばそえﾝだげめぁどごあでしてだあんであって、別に予報

訳：いやいや、母さん、私はそれほどお前をあてにしているんであって、別に予報を

見るに億劫ﾝでこーしてだあんでねぁあんだ。

見るのが億劫でこうしているんじゃないんだ。

A：あい、んだな？よし、わがった。せばこんどがらおれあどめぁどさなんも傘持ってげ

訳：まぁ、そうなの？よし、わかった。じゃあ今度から私はもうお前に全然傘を持って行け

どが持ってがねぁってもいどがいわねぁがら。

とか持って行かなくてもいいとか言わないから。

B：おや、かー、そえﾝだばなんと…今まﾝでずっとおえの面倒みでけであったに、急に

訳：おや、母さん、それはなんとまぁ…今までずっと私の面倒みてくれていたのに、急に

そった、おえどご見捨てるみでぁんたごどいわねぁﾝでけれでぁー。そえﾝだば少しおがﾝだやー？

そんな、私を見捨てるかのようなことを言わないでくれよ。それは少し酷過ぎだよ？

A：あい、めぁまだ、なにおがﾝだでごどあるって？なにﾝでもおえどごあでして自分でもの

訳：もう、お前って人は、なにが酷過ぎだということがあるというの？なんでも私をあてにして自分でものを

考えねぁぐなってるごったらいぐねぁべー？めぁなの今ﾝだばあど務めさもいがねぁ

考えなくなっているならよくないだろう？お前など今はもう仕事にも行かない

としなったあんだもの。少しは頭使うえさねぁば。すんまとﾝどりねぁぐなるや？

歳になったんだからね。少しは頭を使うようにしないと。あっという間に頭がおかしくなるよ？

B：んだたってかー、…。

訳：そうだとしても母さん、…。

C：…とー、見れ、阿部さんねの奥さんがだ、まだなにﾝだがおがしけﾝだしゃべしてだでぁは。

訳：…父さん、見ろ、阿部さんの家の奥さんたちが、またなんだか(≒なにか)おかしな話をしているよ。

D：えー？

訳：んー？

C：阿部さんねの奥さんがだまだおもしれしゃべしてだって。

訳：阿部さんの家の奥さんたちがまた面白い話をしているって言ったんだ。

D：おや、阿部さんって、…なに、あの男の人あの奥さんの旦那さんだなが？

訳：おや、阿部さんというのは、…え、あの男の人があの奥さんの旦那さんなのか？

C：あいさ。…なに、めぁもしかして初めでﾝだが、見だな？

訳：勿論そうだとも。…え、お前もしかして初めてか、見るの？

D：えー、奥さんどごﾝだば何回も見だごどあるたって、旦那さんだば初めで見だな。ずっと

訳：ええ、奥さんは(＝をば)何回も見たことがあるけど、旦那さんは初めて見たね。ずっと

転勤してあってだどって聞であったﾝども…んだが。定年なって戻ってきたなが。

転勤して回っていると聞いていたけれども…そうか。定年になって戻ってきたのか。

C：んだえんだな。

訳：そのようだね。

D：おや、んだな。…しかし外ﾝでいでよぐ騒く゚人がだﾝだごど。いっつもあーにぎやがﾝだあんだが？

訳：おや、そうなの。…それにしても外でよく騒ぐ人たちだなぁ。いつもああ賑やかなのか？

C： …なっと？

訳：…なんだって？

D：あの人がだいっつもあーにぎやがﾝだながって。

訳：…あの人たちはいつもああ賑やかなのかって言ったんだ。

C：んー、んだな。大体いっつもあんだえんだしゃべしてだな。

訳：うん、そうだね。大体いつもあのような話をしているね。

D：…んだなが。いっつもﾝだなが。

訳：…そうなのか。いつもなのか。

C：…なに、にぎやがしてればなにがうまぐねぁごどﾝでもあるあんだが？

訳：…なんだい、賑やかにしていればなにか都合が悪いことでもあるのか？

D：んー？なも、ちょっとうらやましどもったﾝだげﾝだ。

訳：うん？いや、ちょっと羨ましいと思っただけだ。

C：うらやましって、…なに、おえみでぁんたなど一緒ﾝだば不満だな？

訳：羨ましいって、…なんだい、私のようなのと一緒だと不満なの？

D：おや、なも、んでねぁって。たﾝだにうらやましどもったばりﾝだー。このとしなって

訳：おや、いや、そうではないってば。ただ単に羨ましいと思っただけだよ。この歳になって

あー若げぁ人がだみでぁに騒く゚にいってば、よっぽﾝど元気ﾝでねぁば難しもの。

ああ若い人たちのように騒ぐことができるとなれば、よほど元気でなければ難しいからね。

C：あい、そーゆーごどげぁ？…そえﾝだばまずな。たしかにあー騒く゚にいとしょり夫婦も

訳：あら、そういうことかい？…それはまぁね。確かにああ騒ぐことができる年寄り夫婦も

めずらしってばめずらしがもしえねぁな。…んだﾝどもおえﾝだばあーうるせぁぐずっと

珍しいと言えば珍しいかもしれないね。…だけども私はああうるさくずっと

しゃべってるなﾝだばうだでな。

喋っているのは嫌だね。

D：おや、んだがー？めぁにぎやがﾝだな嫌いﾝだな？

訳：おや、そうかぁ？お前は賑やかなのは嫌いなの？

C：んー、んだなー。…おえﾝだばどっちがってば静がﾝだ方好ぎﾝだな。

訳：うん、そうだねぇ。…私はどちらかと言えば静かな方が好きだね。

D：おや、んだなが。静がﾝだ方好ぎﾝだなが。…めずらしごど。おなこ゚がだってば騒か゚し方

訳：おや、そうなのか。静かな方が好きなのか。…珍しいなぁ。女性たちと言えば騒がしい方が

好ぎﾝだもんだどもってあったっけ。

好きなものだと思っていたが。

C：…とー、今の時分そんだらごどゆえば差別ﾝだどってごしゃがえるや？

訳：…父さん、今の時代そんなことを言えば差別だと言って怒られるよ？

D：なに、差別ﾝだど？なして？

訳：え、差別だって？どうして？

C：なしてって、今の時分、「おなこ゚ﾝだばこー思うべ。」だどが「おなこ゚ﾝだばこーするな

訳：どうしてって、今の時代、「女性はこう思うだろう。」だとか「女性ならばこうするのが

当だり前ぁﾝだべ。」だどが、そんだえんだしゃべがだせば悪りぐゆわえる世の中ﾝだあんだ。

当たり前だろう。」だとか、そのような話し方をすれば悪く言われる世の中なんだ。

D：おや、そーゆーもんだなが…。さっさっ、務めさ出はらねぁぐなってがらおが人中[ひとなが]さ

訳：おや、そういうものなのか…。失敗したなぁ、仕事に出なくなってからあまり人前に

出はねぁぐなったがらなんもものわがらねぁぐなってしまったは。…気ーつけねぁば

出なくなったから全然ものがわからなくなってしまったや。…気をつけなければ

なねぁな、そえﾝだば。

ならないね、それは。

C：んだな。昔ﾝだばよぐあったごども、時代変われば悪りごどなったりするもの。新聞どが

訳：そうだね。昔ならばよくあったことも、時代が変われば悪いことになったりするからね。新聞とかを

ちゃんと見で、今の時分の人がだなんだえんだ考え方してだがﾝだばちゃんと覚えで

ちゃんと見て、今の時代の人々がどのような考え方をしているかはちゃんと覚えて

おがねぁばだめﾝだ、ほんとに。

おかなければ駄目だ、本当に。

しめぁに

　以上で今回の秋田弁講座はおしまい。

　ではまた来週へばな。

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