新編秋田弁講座文法篇第42課：終助詞①：「よ」

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文法篇第42課：終助詞①：「よ」

　みなさんこんばんは。

　齶田浦蝦夷です。

　先週とはうってかわって、連日の暑さでやってらんねぇですな。

　ともあれ今回は秋田弁講座42回目。

　終助詞の勉強に入っていきます。

　構成はいつも通りです。

　秋田弁会話だけ読みたい人は末尾の方の「会話：のとこご覧ください。

　ではどうぞ。

文法

１．秋田弁の「よ」。

　標準語の終助詞「よ」に当たる言葉として、秋田弁には「や」「でぁ」「は」がある。それぞれ使われる文脈が違うので、そこに注意しながら覚えていこう。

①標準語の尻上がりで柔らかい感じの「～よ？」→「～や？」となる。

	秋田弁	標準語
①終止形の例	俺ﾝだば知らねぁや？	私は分からないよ？
②命令形の例	薬っこちゃんと飲めや？	薬をちゃんと飲めよ？/飲みなさいよ？
③禁止「な」の例	薬っこ飲むな忘れるなや？	薬を飲むのを忘れるなよ？

説明

・用言の終止形・命令形、そして禁止の終助詞「な」の後ろに付けることができる。

②標準語の尻下がりで攻撃的な感じの「よ。」→「でぁ。」

	秋田弁	標準語
①終止形	そんだごど、俺ﾝだば分がらねぁでぁ。	そんなこと、私はわからないよ。
②命令形	あーうるせぁごど。少し黙れでぁ。	ああうるさいなぁ。少し黙れよ。
③禁止「な」	あいうるせぁごど。喋るなでぁ。	ああもううるさいなぁ。喋るなよ。

説明

１．「でぁ」は、例文を見れば分かると思うが、きつい響きを持つ言葉。

２．用言の終止形・命令形、そして禁止の「な」に接続可能である。

③標準語の、話し手の決意を表す文脈で使う「～よ。」→「～は。」

	秋田弁	標準語
①肯定文	分がった。へば俺行ぐは。	わかった。じゃあ私が行くよ。
②否定文	んだ。へばこれ以上言わねぁは。	そう。じゃあこれ以上言わない(ことにする)よ。

説明

１．用言の終止形に接続する。話し手の決意なので、主語は一人称。

２．決意なので、打消助動詞「ねぁ」につく場合[否定文]は、「～しないよ。」「～しないことにするよ。」という感じの意味になるし、普通の動詞でも「やめる」など動作の中止を表す言葉の場合は「やめるよ。」「やめることにするよ。」といった感じの意味になる。

注意：「は」に男女の別なし！発音も「は」のまま！

・秋田弁の終助詞の「は」の発音は、文字通りはひふへほの「は」。絶対に「わ」と読まないこと。また、男女の別なく用いられる。「は」と書いて「わ」と読むのは主語の後ろにつける副助詞の「は」の方である(例：秋田県は東北地方さある。：副助詞だから「わ」。)。

補足：「は」のその他の意味・用法

①「は」は、放棄・諦め「もう…わ」「もう…や」の「わ」「や」の意味でも使う。

	秋田弁	標準語
例文①	あどなんとﾝでもいは。	もうどうでもいいや。
例文②	あどんたは。仕事辞めるが。	もういやだわ。仕事辞めるか。
例文③	あど知らねぁは。勝手にせ。	もう知らないや。勝手にしなさい。

説明

１．放棄・諦めの「もう…わ/や」は、投げやりな決意と言えよう。本質的には決意の「は」と違いはないと言える。

２．この意味でも相変わらず、用言の終止形に接続。

②「は」は、動詞型用言の命令形に付けて「～しなさいな」くらいの意味を表す。

	秋田弁	標準語
①五段	まま食ぅぇは。	ご飯食いなさいな。
②上一段	ほら、まずめぁもあれみれは。	ほら、とにかくお前もあれを見なさいな。
③下一段	早えぁぐ寝れは。	早く寝なさいな。
④カ変	早えぁぐ帰ってけは。	早く帰って来なさいな。
⑤サ変	めぁも頑張って勉強すれは。	お前も頑張って勉強しなさいな。
⑥助動詞	まず体休ませれは。	まず体を休ませなさいな。

説明

１．柔らかい感じがする命令(個人差・地域差あり)。「ほらほら、～なさいな」という感じ。

２．接続は、用言の命令形である。命令形があるのは動詞型用言だけなので、実質的には動詞型用言の命令形に接続するということになる。

会話

A：あーねふてぁ。…こーねふてぁばなんもする気さねぁなー。

訳：ああ眠たい。…こう眠たければなにもする気にならないねぇ。

B：あい、おどーさん、めぁまだ、…まﾝだ朝間の十時なったばりﾝだやー？なしてねふてぁ

訳：あら、お父さん、お前って人は、…まだ朝の十時になったばかりだよ？どうして眠たい

でごどあるって？

ということがあるというの？

A：なしてって、かー、そえﾝだばおえの方聞ぎでぁでぁ。昨日も十二時ってばあど布団さ

訳：どうしてって、母さん、それは私の方が聞きたいよ。昨日も十二時にはもう布団に

入[は]ってあったに、なしまﾝだねふてぁべ？

入っていたのに、どうしてまだ眠たいのだろう？

B：…なっと？

訳：…なんだって？

A：えー？

訳：んー？

B：めぁさきた昨日晩け゚何時に寝だちゅった？

訳：お前さっき昨日晩何時に寝たと言った？

A：うﾝー？んだがら十二時ってばあど布団さ入[は]ってあったって。

訳：うん？だから十二時にはもう布団に入っていたって言ったんだ。

B：あい、ばがっけ！そんでぁに遅せ時間まﾝで起ぎでればねふてぁぐなるなも当だり前ぁﾝ

訳：もう、馬鹿！そんなに遅い時間まで起きていれば眠たくなるのも当たり前

だべせぁ。めぁなにばがしゃべしてだな？

だろうに。お前は何を馬鹿なことを言っているの？

A：おや、なんと、んめぁもまだ大袈裟ﾝだごどいって、…俺なの毎晩け゚そのぐれぁの時間に

訳：おや、おやおや、お前って奴は大袈裟なことを言って、…私など毎晩そのくらいの時間に

寝でだやー？そえﾝでねふてぁごったば毎朝間ねふてぁぐねぁばおがしねぁは。

寝ているよ？それで眠たいならば毎朝眠たくなければおかしいじゃないか。

B：あい、めぁまだばがしゃべして…このこ゚ろ毎晩け゚遅せ時間に寝でだがらこえぁして

訳：もう、お前って人は馬関なことを言って…このごろ毎晩遅い時間に寝ているから疲れて

朝間っからねふてぁぐなるあんだべ？なにおがしでごどあるって？おがしなおめぁの

朝から眠たくなるんだろう？なにをおかしいということがあるというの？おかしいのはお前の

考え方ﾝだー。

考え方だよ。

A：おやー、そんたしゃべがだあるがー？そんでぁにそんでぁにごしゃがねぁってもいねぁが。

訳：おやぁ、そんな話し方があるかぁ？そんなにそんなに怒らなくてもいいじゃないか。

B：はー、…おえも好ぎﾝでこんだしゃべがだしてるあんでねぁでぁ。めぁさきたがら

訳：はぁ、…私も好きでこんな話し方をしているんじゃないんだよ。お前がさっきから

とﾝどりねぁごどばりゆーがらこーゆーしゃべがだなるなﾝだー。…まずいがら今日がら

わけのわからないことばかり言うからこういう話し方になるのだよ。…まずいいから今日から

夜更かしさねぁﾝで、はえぁぐ寝れや？せばじんじょ朝間っからねふかぎするでごども

夜更かしをしないで、早く寝なさいよ？そしたらきっと朝からうとうとするということも

ねぁぐなるべ。

なくなるだろう。

A：おや、ほんとにげぁ？んー、まずわがった。めぁそんでぁにゆーなﾝだら、まずはえぁぐ

訳：おや、本当にかい？うーん、まぁわかった。お前がそんなに言うのなら、とにかく早く

寝でみるは。んでねぁがらまだんめぁにかってごしゃがえるべし。

寝てみるよ。そうでなければまたお前に怒られるだろうし。

B：あいー好ぎﾝでねぁごど。人せっかぐめぁどごおもってゆってだあじに…、はー、わがった。

訳：もうー気に食わないなぁ。人がせっかくお前を想って言っているのに…、はぁ、わかった。

あどいは。めぁあど好ぎﾝだえにしてれ。おえもあどめぁなにしてだたってなんも

もういいや。お前はもう好きなようにしていなさい。私ももうお前が何をしているとしてもなんにも

口出さねぁは。んだ。あどそーすらな。

口出ししないよ。そうだ。もうそうしよう。

A：おや、なんと、人せっかぐめぁのゆーごど聞ぐどってだあじ、そんでぁにこじけねぁ

訳：おや、おいおい、人がせっかくお前の言うことを聞くと言っているのに、そんなにいじけない

たっていべー？そんた人どご見捨てるえんたしゃべがださねぁﾝでけれでぁ。

としても(=いじけなくても)いいだろう？そんな人を見捨てるような話し方をしないでくれよ。

B：えー？なも、別にいねぁは。おれなにがゆえばめぁおれかってやっつけらえだどって

訳：んー？いや、別にいいじゃない。私が何かを言えばお前は私にいじめられたと言って

文句つぐなﾝだべー？んだごったらあどいって。おれﾝだばあどこえがらなんも口出さねぁがら。

文句をつくのだろう？そうであるならもういいってば。私はもうこれからなんにも口出ししないから。

めぁどごおもって心配ぁしてものいったたってごしゃがえだどってゆわえるばりﾝだし、

お前を想って心配してものを言ったとしても怒られたと言われるだけだし、

おらﾝだばあどなんもいらねぁぐものゆわねぁは。んだがらめぁもあど好ぎﾝだえに

私はもうなんにも不必要にものを言わないよ。だからお前ももう好きなように

やってれは。そえﾝでめぁ病気したたっておらあど知らねぁ。

やっていなさいな。それでお前が病気をしたとしても私はもう知らない。

A：おや、かー…、まず、おえも悪りがったがらそーこじけでけなでぁ。あどおえも文句

訳：おや、母さん…、まぁ、私も悪かったからそういじけてくれるなよ。もう私も文句を

つぐなやめるがら。なんとが面倒みでけれー。

つくのをやめるから。どうか面倒をみてくれ。

B：えー？…んた。おらあどめぁの面倒なのみねぁごどするは。自分のごどﾝだばあど自分で

訳：んー？…嫌だ。私もうお前の面倒など見ないことにするよ。自分のことはもう自分で

やってけれ。おらあどつかえだは。

やってくれ。私はもう疲れたや。

A：…かー、ほんとにおれ悪りがったがら、…まずそーゆわねぁﾝで。おえもなるべぐめぁどさ

訳：…母さん、本当に私が悪かったから、…まぁそう言わないで。私もなるべくお前に

迷惑かげねぁえに気ーつけるがら。なんとが助けでけれ。な？

迷惑をかけないように気をつけるから。どうか助けてくれ。ね？

B：はー、…めぁもほんとに人さやがなるな好ぎﾝだ人ﾝだごど。そんた情けねぁしゃべする

訳：はぁ、…お前も本当に人の世話になるのが好きな人だなぁ。そんな情けない話をする

ごったら最初がら人どご悪りぐゆーなやめればいあじ。…まずわがった。そごまﾝで

なら最初から人を悪く言うのをやめればいいのに。…まぁわかった。そこまで

ゆーあんだばなにが気づだごどあればおれもしゃべるえにするたって、…だﾝどもこんど

言うんならば何か気づいたことがあれば私も喋るようにするけれども、…だけどこんど

まだおれかって注意さえで「ごしゃがえだー、やっつけらえだ」どってゆーえんだら

また私に注意されて「怒られた、いじめられた」と言うようなら

こんどごそあど知らねぁがらな。あどそんだえんだごど言うなや？…ほんとに馬鹿

今度こそもう知らないからね。もうそのようなことを言うなよ？…、本当に馬鹿

みでぁんでんたでぁは、めぁどご心配ぁして注意してんめぁかって悪りぐゆわえるなﾝだば。

みたいで嫌だよ、お前を心配して注意してお前に悪く言われるのは。

A：えー、まず、ほんとに悪りがったって。ごめんしてけれでぁ。おえもこえがらちゃんと

訳：ええ、とにかく、本当に悪かったってば。許してくれよ。私もこれからはちゃんと

気ーつけるがら。

気をつけるから。

B：あいんだすか？まずおえﾝだばどっちﾝでもいったたってな。

訳：あらそうですか？まぁ私はどっちでもいいけどね。

A：…(こごﾝでまだそんだしゃべがだねぁどって騒け゚ばごしゃがえるなﾝだべな。…まず

訳：…(ここでまたそんな話し方はないと騒げば怒られるのだろうね。…とにかく

機嫌いぐなるまﾝでいらねぁぐものいわねぁ方いえんだ。)

機嫌がよくなるまで不必要にものを言わない方がいいようだ。)

B：しかしー、あど十時半げぁ？…そろそろ買い物さ行がねぁばなねぁな。

訳：それにしても、もう十時半かい？…そろそろ買い物に行かなければならないね。

A：…おや、あどそんだ時間なった？

訳：…おや、もうそんな時間になった？

B：んだえんだは。…昼ままこしぇぁるってばもの足えねぁがら、おらまず買い物に行ぐは。

訳：そのようだ。…昼ご飯をこしらえるとなればものが足りないから、私はひとまず買い物に行くよ。

A：…んだが。せばおれは家ﾝでいで留守番するはな。…まず気ーつけであげなー。…はー、

訳：…そうか。じゃあ私は家で留守番をするよ、ね？…とにかく気をつけて行きなさいね。…はぁ、

やっぱりなんだが機嫌悪りえんだな。しばらぐ当だり障りねぁしゃべして過こ゚さねぁば。

やっぱりなんだか機嫌が悪いようだね。しばらく当たり障りのない話をして過ごさないと。

…「口はわざわいのもど」ってゆーﾝども、いらねぁごどﾝだばゆーもんでねぁな、ほんとに。

…「口はわざわいのもと」と言うけど、不必要なことは言うものではないね、本当に。

しめぁに

　以上で今週の秋田方言講座もおしまい。

　ではまた来週。

　へばな。

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