新編秋田弁講座文法篇第20課：助動詞⑪：比況「かのようだ」

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文法篇第20課：助動詞⑪：比況「かのようだ」

　みなさんこんばんは。

　齶田浦蝦夷です。

　今回は秋田弁の文法講座の20回目です。

　構成も相変わらずです。秋田弁会話例だけ

　見たい人は後の方の「会話」のとこだけ見ていただければ。

　ではどうぞ。

文法

１．秋田弁の比況「かのようだ」

　標準語の「かのようだ」も、秋田弁では前回習った「みでぁんだ」を使って表現する。

具体例

秋田弁	標準語
あの言ー方ﾝだば俺悪りみでぁんだ。	あの言い方では私が悪いかのようだ。
まるﾝで死んだみでぁに動がねぁ。	まるで死んだかのように動かない。

２．「みでぁんだ」の活用：

「みでぁんだ」の活用は前回習ったのとなんら変わりはない。なので以下のようになる。

	秋田弁	標準語
連用形１	みでぁに	かのように
連用形２	みでぁんで	かのようで
連用形３	みでぁんであっ	かのようだっ
終止形	みでぁんだ	かのようだ
連体形	みでぁんだ	かのような
仮定形１	みでぁんだら	かのようなら
仮定形２	みでぁんだ(ば)	かのようなら(ば)

例文

	秋田弁	標準語
連用形１	なにﾝでも知ってるみでぁに喋る。	なんでも知ってるかのように喋る。
連用形２	それﾝだば俺悪りみでぁんで後味悪り。	それでは私が悪いかのようで後味が悪い。
連用形３	あど長け゚ぁぐねぁみでぁんであった。	もう長くないかのようだった。
終止形	その言ー方ﾝだば俺悪りみでぁんだ。	その言い方だと私が悪いかのようだ。
連体形	あど死ぬみでぁんだ口ぶりﾝであった。	もう死ぬかのような口ぶりだった。
仮定形１
仮定形２

説明

１．活用は前回の「みでぁんだ」と同じ。但し、標準語で「かのようなら」「かのようならば」などという表現が存在しないように、秋田弁でも仮定形は実質存在しない。

２．また、接続も違う。今回の「みでぁんだ」は、以下のように複雑な接続の仕方をする。

①動詞型用言→用言の連体形に接続：上記の連用形１・連体形の例文がその例に当たる。

②形容詞型用言→用言の連体形に接続：上記の連用形２・３、終止形の例文がその例。

③形容動詞型用言→用言の語幹に接続する。

④指定の助動詞「だ」→「だ」の直前の単語に、「だ」に代わって「みでぁんだ」が接続。

　③④についてはややこしいので、以下、補足にて改めて分かりやすく説明する。

補足

・但し、標準語の「-であるかのよう」に当たる表現は、以下のようにする必要がある。

	秋田弁	標準語
連用形１	-みでぁに	-であるかのように
連用形２	-みでぁんで	-であるかのようで
連用形３	-みでぁんであっ	-であるかのようだっ
終止形	-みでぁんだ	-であるかのようだ
連体形	-みでぁんだ	-であるかのような
仮定形１	-みでぁんだら	-であるかのようなら
仮定形２	-みでぁんだ(ば)	-であるかのようなら(ば)

具体例

	秋田弁：形容動詞型	秋田弁：助動詞「だ」	標準語
連用形１	綺麗-みでぁに	神さん-みでぁに	綺麗-/神さま-であるかのように
連用形２	綺麗-みでぁんで	神さん-みでぁんで	綺麗-/神さま-であるかのようで
連用形３	綺麗-みでぁんであっ	神さん-みでぁんであっ	綺麗-/神さま-であるかのようだっ
終止形	綺麗-みでぁんだ	神さん-みでぁんだ	綺麗-/神さま-であるかのようだ
連体形	綺麗-みでぁんだ	神さん-みでぁんだ	綺麗-/神さま-であるかのような
仮定形１	綺麗-みでぁんだら	神さん-みでぁんだら	綺麗-/神さま-であるかのようなら
仮定形２	綺麗-みでぁんだ(ば)	神さん-みでぁんだ(ば)	綺麗-/神さま-であるかのようなら(ば)

例文

	秋田弁	標準語
連用形１	自分一番綺麗みでぁに言う。	自分が一番綺麗であるかのように言う。
連用形２	俺悪者みでぁんで気持ぢ良ぐねぁ。	私が悪者であるかのようで気持ちよくない。
連用形３	さなか゚ら神さんみでぁんであった。	さながら神様であるかのようであった。
終止形	それﾝだば俺悪人みでぁんだ。	それでは私が悪人であるかのようだ。
連体形	普段だば静がみでぁんだ言―方する。	普段なら静かであるかのような言い方をする。
仮定形１
仮定形２

説明

１．要するに、「-であるかのよう」→「-みでぁ」となる。

２．「-ﾝだみでぁに」とならない点には注意しよう。

参考：「-であるかのよう」→「-みでぁに」の考え方

・「であるかのよう」は、標準語でも文語的表現である。これを標準語の口語に直すと、「みたい」になる。「自分が一番偉い人であるかのように言う」なら、口語なら「自分が一番偉い人、みたいに言う」と言うだろう。

「みたい」は秋田弁で「みでぁ」となるので、結果的に本課で習った通りになるわけである。つまり、順番としては以下のような感じとなると考えてもよいだろう。

①標準語の文語的表現「であるかのよう」→標準語口語で「みたい」

②標準語の「みたい」→秋田弁で「みでぁ」

③「①」「②」より、「-であるかのよう」→秋田弁で「-みでぁ」となる。

会話

A：あいー腹悪りごど。

訳：もう気分が悪いなぁ。

B：おや、かー、なにしたな？そーいらいらして。

訳：おや、母さん、どうしたの？そういらいらして。

A：なもよ、向げぁねの旦那さん、昨日の晩け゚がら腹下して下痢してだらしﾝどもせぁ、

訳：いやよぉ、向かいの家の旦那さんが、昨日の晩からお腹を壊して下痢をしているらしいけどさぁ、

したっけ向げぁねの奥さんだ人、「めぁけでけだ山菜食ってがらこーなったあんだ。」

そしたら向かいの家の奥さんである人が、「お前がくれた山菜を食ってからこうなったんだ。」

だどって、おれやったみでぁにいうもの。おらあど腹悪りして腹悪りしてなもかも

と言って、私がやったかのように言うからね。私はもうむかついてむかついてしかたが

なねぁでぁは。

ないよ。

B：おや、ほんとにげぁ？そえﾝだばひﾝでごど。なんも証拠もねぁあじ人さかﾝづげで。あの

訳：おや、本当にかい？それは酷いなぁ。なにも証拠もないのに人のせいにして。あの

人がださけだ山菜ﾝだばおらがだも昨日食ったねぁ？だﾝどもだれも腹下さねぁや？

人たちにくれた山菜は私たちも昨日食ったじゃないか？けど誰もお腹を壊していないよ？

A：んだがらよ。んだがらおれも奥さんさそーいってやったっけこんど、「せばなに？おら

訳：まったくだよ。だから私も奥さんにそう言ってやったところ今度は、「じゃあなに？私が

こしぇぁだまま食って腹下したってげぁ？」だどってあぐだえでせぁ。まんず

こしらえたご飯を食ってお腹を壊したっていうのかい？」と言って暴れてさぁ、とにかく

好ぎﾝでねぁごど。なしてあー人どさかﾝづげにいもんだ？

気に食わないなぁ。どうしてああ人のせいにすることができるものだ？

B：んー、聞ーでれば奥さんよっぽﾝどおらがだどご信用してねぁえんだな。

訳：うーん、聞いていると奥さんはよほど私たちを信用していないようだね。

A：んだがらして。まるﾝでおらがだ毒盛ったみでぁんだしゃべして人がださしゃべって

訳：まったくだよ。まるで私たちが毒を盛ったかのような話をして人々に喋って

あってだがらせぁ、おれも流石に腹悪りぐなって、「せばなしてめぁの旦那さんばり

回っているからさぁ、私も流石に気分が悪くなって、「じゃあどうしてお前の旦那さんだけ

腹下してよその人だれんも腹下さねぁなﾝだ？毒盛ったごったば山菜食ったあじままんで

お腹を壊してよその人はだーれもお腹を壊していないのだ？毒を盛ったならば山菜を食った奴は皆一様に

腹下さねぁばおがしねぁ？なしてめぁも食ったあじにめぁはそー元気にごしゃぐ

お腹を壊さなければおかしいじゃない？どうしてお前も食ったのにお前はそう元気に怒る

にいな？えー？ほんとに毒盛った人いだごったば、そえﾝだばめぁよりいねぁねぁ。

ことができるの？ねぇ！本当に毒を盛った人がいるならば、それはお前しかいないじゃない。

このばがっけ！」だどってごしゃだっけ、こんどして自分被害者みでぁにめそめそど

この馬鹿！」と言って怒ったところ、今度そして自分が被害者であるかのようにめそめそと

泣でせぁ、「阿部さんかってやっつけらえで涙出でなもかもなねぁ。」だどって騒んで

泣いてさぁ、「阿部さんにいじめられて涙が出てしかたがない。」と言って騒いで

せぁ、まるﾝでおれあれどごやっつけでだみでぁんであったっけ。

さぁ、まるで私が彼女をいじめているかのようだったよ。

B：なんーだって、そえﾝだば…なに八十より先なる人そーめそめそど人前ぁﾝで泣ぐでごど

訳：まったくもう、それは…なにを八十歳以上になる人がそうめそめそ人前で泣くということが

あるっては？人せっかぐものけでけだあじ、それさかﾝづげで人悪りみでぁにいって、

あるっていうのだ？人がせっかくものをくれたのに、それのせいにして人が悪いかのように言って

こんどして言ー返さえればわんわんど騒んで泣ぐってげぁ？そえﾝだばなんぼなんだたって

今度そして言い返されるとわんわん騒いで泣くってかい？それはいくらなんでも

おがﾝだや？その奥さんだ人、あどとﾝどりねぁぐなってきたあんでねぁ？

酷過ぎだよ？その奥さんである人、もう頭がおかしくなってきたんじゃない？

A：んだがらなー。あだりの人がだもあえ見で、「この人あどほじねぁぐなったあんでねぁ

訳：まったくねぇ。周りの人々もあれを見て、「この人もう馬鹿になったんじゃない

げぁ？」だどって呆えであったっけ。

かい？」と言って呆れていたよ。

B：そえﾝだばんだべー？山菜なのあだりの人がださも配ってんなして食ってだあじ、

訳：それはそうだろう？山菜など周りの人々にも配ってみんなで食っているのに、

一人して腹下して人さかﾝづげでだえそんたばがっけﾝだ話信じるもんだっては？人さ

一人でお腹を壊して人のせいにして誰がそんな馬鹿な話を信じるものだというのだ？人の

かﾝづげであぐだえで、ごしゃがえればわんわんど泣で、子供さ戻ったみでぁんだな、

せいにして暴れて、怒られればわんわん泣いて、子供に戻ったかのようだね、

そえﾝだば。

それだと。

A：ほんとにんだな。としょりﾝだあじ子供なったみでぁんでうだでがったでぁは。年行げば

訳：本当にそうだね。お年寄りなのに子供になったかのようで気持ち悪かったよ。年を取れば

あっこまﾝでごさらしﾝだごどすにいもんだあんだべが？あんだえなるごったばおらあど

あそこまで恥さらしなことができるものなんだろうか？あのようになるならば私はもう

さっさどあっちのゆさ行ぎでぁでぁは。

さっさとあの世に行きたいよ。

B：…まずな。とﾝどりねぁぐなって人がだにかってきちか゚いなったみでぁにいわえる

訳：…まぁね。頭がおかしくなって人々に気違いになったかのように言われる

ごったばな、信用ねぁぐす前ぁに死んだ方いあんだがもしえねぁな、たしかに。

ならばね、信用をなくす前に死んだ方がいいのかもしれないね、たしかに。

⁠

しめぁに

　以上で今回の秋田弁の勉強はおしまいです。

　因みに仮定形１・２の例文がないのは、まず使わないから、という理由です。

　正直リアルで使う場面が思いつかない。

　…ともあれ、今回はこの辺で。また来週。

　へばまず。

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