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新編秋田弁講座文法篇第4課:形容詞「終止形の作り方」・「形容詞の活用」

文法篇第4課:形容詞「終止形の作り方」・「形容詞の活用」

 みなさんこんばんは。

 

 齶田浦蝦夷です。

 

 今週も文法篇アップしていきますよ。

 

 

 

 構成も特に変わらないので、

 

 会話のみ興味ある人は最後の対訳付きの会話のみ見ればよろしいかと。

 

 ではではどうぞ。

文法

 

 

 

1.終止形の作り方

①標準語で、語末の母音が-あい」の形容詞→秋田弁では-えぁ」になる。

②標準語で、語末の母音が-いい」の形容詞→秋田弁では-い」になる。

③標準語で、語末の母音が-うい」の形容詞→秋田弁では-い」になる。

④標準語で、語末の母音が-おい」の形容詞→秋田弁では-え」になる。

 

 

番号

標準語

秋田弁

-あい

[]

[]れぁ

[]

ねぁ

-いい

しい

しい

-うい

[]

[]

るい

-おい

[]

[]

[]

[]

 

説明

1.①の「-あい」が「-えぁ」になるパターンを除けば、粗雑な言い方の「べらんめぇ口調」によく似た感じになるわけである。「べらんめぇ口調」だと、①「くらい」→「くれー」、②「うれしい」→「うれしー」、③「あかるい」→「あかりー」、④「ふとい」→「ふてー」になるだろう。まぁ秋田弁ではいちいち「―」と伸ばしたりしないが。

2.なお、①の「-あい」→「-えぁ」のパターンも、現在の秋田弁ではお年寄りでも「くらい」→「く」、「ない」→「」のように、「ぁ」の音が脱落してただの「-え」の音で発音されるのが一般的となっている(発音篇参照)

 

 

2.例外

 およそ秋田弁の形容詞の終止形というものは、上記四つの法則に従って規則的に生み出すことが可能だが、やはり規則があれば例外があるものである。

上記の法則からは導き出せない、秋田弁独自の形を持つ形容詞を以下に明示しておく。何れも日常多用される言葉である。

 

 

番号

標準語

秋田弁

遠い

[]

あつい(熱・暑のみ)

あっち

注意:厚いの意味の場合

あつい()

あぢ (つまり規則通り)

寒い

[]

暑い

[]

冷たい

[]っけ

古い

[ふる]

大きい

[]っき

小さい

[]っちぇぁ

良い

[]

賢い

[さが]

はやい

はえぁ

強い

[]/[つえ]

青い

[]

痒い

[]

恐い

おっかねぁ

重い

[おぼ]でぁ

軽い

[かる]っけ

眠い

[ねふ]てぁ

濃い

[]

恥かしい

しょし

細かい

[]めぁ

柔かい

[]っけ

あたたかい[温・暖]

あったけぁ

まる[円・丸]

まるっけ

美味[うま]

美味[]めぁ/うめぁ

 

3.形容詞の活用

 秋田弁の形容詞の活用は、以下の通りである。「-あい」「-いい」「-うい」「-おい」のどの形から作られたものであっても、以下の通り全く同じ活用の仕方をする。

 

 

秋田弁

標準語

連用形1

赤げぁ/嬉し/薄し/黒れ-

/嬉し//-

補足①

赤げぁ/嬉し/薄し/黒れ-して

/嬉し//-くて

補足②

赤げぁ/嬉し/薄し/黒れ-っても

/嬉し//-くても

連用形2

赤げぁ/嬉し/薄し/黒れ-がっ

/嬉し//-かっ

終止形

赤げぁ/嬉し/薄し/黒れ

/嬉し//-

連体形

赤げぁ/嬉し/薄し/黒れ

/嬉し//-

仮定形

赤げぁ/嬉し/薄し/黒れ()

/嬉し//-けれ()

 

説明

 意味は、基本的には対応する標準語と全く同じ。違いは注意の項参照。

作り方は、以下の通り。

1.連用形1:終止形+ぐ」

注意:標準語の「近くにいる」「遠くのもの」のような名詞として用いる用法では使わない

2.補足①:終止形+して」

3.補足②:終止形+っても」

4.連用形2:終止形+がっ」

5.終止形本課1.2で学んだ通り

6.連体形:終止形」と全く同じ形

7.仮定形:終止形」と全く同じ形。後ろに必ず助詞「ば」を付けて用いる。

 

例文

 

 

秋田弁

標準語

1.連用形1

赤げぁぐする

赤くする

嬉しぐねぁ

嬉しくない

薄しぐのばす

薄くのばす

髪ンだば黒れぐ、肌ンだば白れ

髪は黒く、肌は白い

2.補足①

赤げぁして綺麗だ。

赤くて綺麗だ。

嬉しして泣だ。

嬉しくて泣いた。

薄ししてんめぁぐねぁ。

薄くて美味くない。

黒れして不気味ンだ。

黒くて不気味だ。

3.補足②

赤げぁっても綺麗ンだ。

赤くても綺麗だ。

嬉しっても泣ぐもんだ。

嬉しくても泣くものだ。

薄しっても我慢すれ。

薄くても我慢しろ。

黒れってもい。

黒くてもいい。

4.連用形2

赤げぁがった。

赤かった。

嬉しがったら笑え。

嬉しかったら笑え。

薄しがったりする。

薄かったりする。

黒れがった毛色

黒かった毛色

5.終止形

赤げぁ

月が赤い

俺ンだばたいした嬉しや?

私はとても嬉しいよ?

薄しでぁ。

味が薄いよ。

この服おが黒れ

この服はあまりに黒い

6.連体形

赤げぁ

赤い

嬉し出来事

嬉しい出来事

薄し

薄い

黒れ

黒い

7.仮定形

赤げぁ血ンだ。

赤けれ血だ。

嬉し笑え。

嬉しけれ笑え。

薄し醤油足せ。

薄けれ醤油を足せ。

黒れ癌ンだがもしれねぁ。

黒けれ癌かもしれない。

 

-会話-

A:はー、まンだ五時[ごじ]ンだあじ、暗れぁなー。

訳:はぁ、まだ五時なのに、暗いねぇ。

B:んー、んだなー。五時ってばまンだ明り時間だはずンだンども、冬なったっけ暗れぁぐなる

訳:んー、そうだねぇ。五時といえばまだ明るい時間なはずだけど、冬になったら暗くなる

なあっというまなったは。

のがあっというまになった。

A:んだがらして。冬至過き゚ればまだ日ー長け゚ぁぐなるべたって、そえまンでずっとこー

訳:まったくだよ。冬至を過ぎればまた日が長くなるだろうけど、それまでずっとこう()

はえぁぐ日ー暮れるってばなー。

早く日が暮れるとなるとねぇ。

B:えー、なんだがたのしぐねぁぐなるなやな。こー暗れぁば。ほんとにやめぁなるでぁ

訳:ええ、なんだか楽しくなくなるんだよね。こう()暗いと。本当に気が滅入るよ。

は。はー、はえぁぐ春なねぁべがー。

はぁ、早く春にならないだろうか。

A:んだなー。はえぁぐ春こればいったたって、まンだ冬至にもなねぁに春来るあじ

訳:そうだねぇ。早く春が来ればいいけれども。まだ冬至にもならないのに春が来るのを

歯噛[はか゚]みして待ってだたってなんもなねぁべせぁ。

歯を食いしばって待っていたとしても何にもならないだろうさ。

B:はー、んだなやな。まンだ冬至も過き゚ねぁなやな。なんとしたもんだべ?暗れぁして

訳:はぁ、そうなんだよね。まだ冬至も過ぎていないんだよね。どうしたものだろう。暗くて

んたどってずっとしゃべってだたってなんもなねぁべしあっ、んだ。んめぁなにが

嫌だとずっと喋っていたとしても何にもならないだろうしあっ、そうだ。お前なにか

気ー晴れるえんだ話っこなのねぁ?

気が晴れるような話などない?

A:おや、めぁもまだ、急にそんだごど言わえだたって思いつがねぁでぁ。そー人さ話して

訳:おや、お前って奴は、急にそんなことを言われたとしても思いつかないよ。そう人に話して

楽し気分なるえんだごどあるごったら今こーしてかだいぎつでなのいねぁべせぁ?

楽しい気分になるようなことがあるなら今こうして溜息ついてなどいないだろう?

B:んー、なも、別にそんだ最近の話ンでねぁってもあんだ。最近楽しごどねぁっても昔の

訳:うーん、いや、別にそんな最近の話でなくてもいいんだ。最近楽しいことがなくても昔の

話ンだばなんぼンでもおもしれ話っこでぎるべ、めぁンだば。

話ならばいくらでも面白い話ができるだろう、お前ならば。

A:んー、んだなー。たしかにおれも昔ンだば行がねぁどごねぁンだげあっちゃこっちゃ旅さ

訳:うーん、そうだねぇ。確かに私も昔は行かないところがないほどあっちへこっちへ旅に

出はってあってあったもの。楽しがったごどどが話せってば話すにいンども、旅って

出て歩き回っていたからね。楽しかったこととかを話せとなれば話すことができるが…旅って

楽しがったごどばりンでもねぁなやな。苦しがったり、辛れぁがったりしたごどもいっぺぁ

楽しかったことばかりでもないんだよね。苦しかったり、辛かったりしたこともいっぱい

あったしそえンでもいがったらしゃべるンども。

あったしそれでもよかったら喋るけれども。

B:えー、そえンでもがらまず話してみでけれせぁ。たんだに暗れぁどってしゃべってる

訳:ええ、それでもいいからまぁ話してみてくれ。ただただ暗いと喋っている

ばりよりンだばよっぽンどそっちの方気ー晴れるべし。

だけよりはずっとそっちの方が気が晴れるだろうし。

A:んだが?わがった。せばしゃべらな。あえンだばおえか゚まンだ二十[にじゅー]ンであった

訳:そうか?わかった。じゃあ喋ろう。あれは私がまだニ十歳だった

づぎの話ンだンども…。

  時の話だけれども…。

 

 

しめぁに

 以上で今週の講座は終了。

 

 ではまた次回。へばな。

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