新編秋田弁講座文法篇第11課：助動詞②：受動「れる」「られる」

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文法篇第11課：助動詞②：受動「れる」「られる」

　みなさん、こんにちは。

　齶田浦蝦夷です。

　今回も相変わらずか感じの構成でやっていきますので、

　標準語対訳付き秋田弁会話だけ見たいと言う方は

　最後の方まですっとばしてそこだけ見ていただければと思います。

　ではどうぞ。

文法

１．秋田弁の「れる」「られる」

　標準語の「れる」「られる」は、秋田弁でも「れる」「られる」である。

２．「れる」「られる」の活用

　秋田弁の「れる」「られる」は、標準語の「れる」「られる」と同じで、下一段活用に分類される。なので命令形だけ標準語と違う。活用は以下の通り。

	秋田弁	標準語
未然形	れ	れ
未然形	られ	られ
連用形	れ	れ
連用形	られ	られ
終止形	れる	れる
終止形	られる	られる
連体形	れる	れる
連体形	られる	られる
仮定形	れれ	れれ
仮定形	られれ	られれ
命令形	れれ	れろ
命令形	られれ	られろ

具体例

	秋田弁	標準語
未然形	書が-れ-ねぁ	書か-れ-ない
未然形	見-られ-ねぁ	見-られ-ない
連用形	書が-れ-でぁ	書か-れ-たい
連用形	見-られ-でぁ	見-られ-たい
終止形	書が-れる	書か-れる
終止形	見-られる	見-られる
連体形	書が-れる-づぎ	書か-れる-とき
連体形	見-られる-づぎ	見-られる-とき
仮定形	書が-れれ-ば	書か-れれ-ば
仮定形	見-られれ-ば	見-られれ-ば
命令形	書が-れれ	書か-れろ
命令形	見-られれ	見-られろ

説明

１．「れる」が五段活用動詞の未然形に、「られる」が上一段・下一段・カ行変格活用動詞の未然形に接続する点も標準語と全く同じ。なので接続については気にしなくていい。

２．秋田弁の下一段活用なので、やはり命令形「-えろ」は「-えれ」となる。

注意

・用法は基本的に標準語と同じだが、秋田弁の「れる」「られる」には、標準語の「この天気だから、雨が降るように思われる。」とか「自然と昔のことが思い出される。」等のような自発の用法はない。

補足：秋田弁の「される」

「される」は、秋田弁でも「される」。同じく下一段活用なので、命令形だけ標準語と違う。

	秋田弁	標準語
未然形	さ-れ-ねぁ	さ-れ-ない
連用形	さ-れ-でぁ	さ-れ-たい
終止形	さ-れる	さ-れる
連体形	さ-れる-づぎ	さ-れる-とき
仮定形	さ-れれ-ば	さ-れれ-ば
命令形	さ-れれ	さ-れろ

例文

赤字のうちの、「かって」「にかって」については説明参照。

	秋田弁	標準語
未然：五段	叱られねぁ子供	叱られない子供
未然：上下一・カ変	来られねぁづぎ	来られないとき
未然：サ変	記録されねぁがった歴史	記録されなかった歴史
連用：五段	おれのまま食ゎれだ。	私のご飯が食われた。
連用：上下一・カ変	子供かって助けられでしまった。	子供に助けられてしまった。
連用：サ変	人かって心配ぁされだごどねぁ。	人に心配されたことがない。
終止：五段	虫にかって刺される。	虫に刺される。
終止：上下一・カ変	人かって見られる。	人に見られる。
終止：サ変	家[え]の中警察かって捜索される。	家の中を警察に捜索される。
連体：五段	人にかって読まれる本	人に読まれる本
連体：上下一・カ変	若げぁ人かって着られる服	若い人に着られる服
連体：サ変	心配[しんぺ]ぁされる人	心配される人
仮定：五段	そごさ立だれれば邪魔ﾝだ。	そこに立たれれば邪魔だ。
仮定：上下一・カ変	今来られれば困る。	今来られれば困る。
仮定：サ変	心配ぁされれば申し訳ねぁ。	心配されれば申し訳ない。
命令：五段	いっそそのまま食ゎれれ！	いっそそのまま食われろ！
命令：上下一・カ変	人かって見られれ！	人に見られろ！
命令：サ変	逮捕されれ！	逮捕されろ！

説明

１．標準語の受動文「Aに～される」は、例文の通り、秋田弁では、以下のように言う。

①「Aにかって～される」：標準語の「Aに～される」の意味。

②「Aかって～される」：①から「に」を省いた形。こちらの方が我が家ではよく使う。

２．なお、①②は形以外の違いはなく、ニュアンスの違いなども特に存在しない。

３．「Aにも/になら/には…される」のように、受身で「に」の直後に助詞を付ける時は、何故か「(に)かって」は使うことができない。その場合は、「に」をそのまま使う。

例①：「にも」：子供にも助けられた。→子供にも助けられだ。

例②：「には」：犬には吠えられたくない。→犬にﾝだば吠えられだ。

例③：「になら」：あなたになら見られてもいい。→あﾝだにﾝだば見られでもい。

会話

A：かー。

訳：母さん。

B：あい、どでんした。…とー、急になにしたな？

訳：まぁ、びっくりした。…父さん、急にどうしたの？

A：なにしたなって、んめぁごそなにしたな？おれたﾝだ「かー」どって話しかげだﾝだげﾝ

訳：どうしたのって、お前こそどうしたの？私はただ「母さん」と言って話しかけただけ

だや？

だよ？

B：んー、なも、なもねぁﾝどもよ。

訳：うーん、いや、なにもないけどよ。

A：…。

訳：…。

B：…なにした？

訳：…どうした？

A：うﾝ―？なも、なんだが怪しなーどもって。…なに、なにﾝだが人にかって見られれば

訳：うん？いや、なんだか怪しいねぇと思って。…なんだい、なにだか人に見られれば

んたものﾝでもかぐしてだあんだが？

嫌なものでも隠しているのか？

B：あいー、とーさん、めぁもまだ根性悪りごど。なして急にそんたしゃべするなー？

訳：もう、父さん、お前って人は意地が悪いなぁ。どうして急にそんな話をするの？

A：んだってめぁ、さきたがら後ろのなちらちらど見で気にしてだえんだねぁが。

訳：だってお前、さっきから後ろの物をちらちらと見て気にしているようじゃないか。

B：…なも、そんたごどねぁ。

訳：…いや、そんなことはない。

A：んだが。へばさきたまﾝでなにしてあった？

訳：そうか。じゃあさっきまでなにをしていた？

B：んー、なも、なもさねぁﾝでだー。

訳：うーん、いや、なにもしないでいたよ。

A：…ほんとﾝだがや？せばなしてまなぐ逸らすー？おれかって聞がれればうまぐねぁごどﾝ

訳：…本当かねぇ？じゃあどうして目を逸らす？私に聞かれれば都合が悪いこと

でもしてだあんでねぁげぁ？

でもしていたんじゃないかい？

B：…なんも、んでねぁー。おれ人かって見られで困るえんだごどﾝだばねぁやー？まして

訳：…ぜんぜん、そうではないよ。私は人に見られて困るようなことはないよ？まして

めぁにﾝだばなに見られだたって困るでごどねぁでぁは。どごの家ﾝでいで夫ﾝだ人にも

お前にならば何を見られたとしても困るということはないよ。どこの家に夫である人にも

見られでぁぐねぁものある妻[かが]いるもんだってはー。めぁにﾝだばそんだえんだ疑い

見られたくないものがある妻がいるものだというのか。お前にはそのような疑いを

かげられでぁぐねぁがったなー。なしてこー根性悪りべなー、おらえのおどーさん。

かけられたくなかったねぇ。どうしてこう(も)意地が悪いのだろうねぇ、私の家のお父さんは。

A：あー、んだー。せばなにしてあったあんだ？

訳：ああ、そう。じゃあなにをしていたんだ？

B：…あい、とーさん、そんたごどより…

訳：…もう、父さん、そんなことより…

A：なに、おれさいわれねぁごどげぁ？

訳：え、私に言えないことかい？

B：…。

訳：…。

A：やっぱりんだえんだな。なに、おれにかって見つけられねぁえに銭[じぇん]ﾝでも隠してだが？

訳：やっぱりそのようだね。なんだい、私に見つけられないようにお金でも隠していたか？

B：あいー、…めぁもまだ、おらえさ隠すﾝだげ銭[じぇん]あるってげぁ？隠されで困るﾝだげ

訳：あらもう、…お前って人は、私の家に隠すほどお金があるというのかい？隠されて困るほど

銭[じぇん]ねぁなか゚おらえﾝだべー？あまりおがしけﾝだごどいわねぁﾝでけれー。そんた

お金がないのが私の家だろう？あまりおかしいことを言わないでくれ。そんな

ごどいわれればなぼーおれめぁの家族ﾝだたって傷つぐやは？

ことを言われればいくら私がお前の家族だとしても傷つくよ？

A：そのわりになんだが話逸らすなに必死なってだねぁが？銭[じぇん]でねぁたって人

訳：そのわりになんだか話を逸らすのに必死になっているじゃないか？お金でないとしても人

かって見られで、知られでしまえばうまぐねぁごどってあるもんだべ？まずいーがら

に見られて、知られてしまえば都合が悪いことというのはあるものだろう？まぁいいから

白状せ。

白状しろ。

B：はー、とーさん、めぁまだなにしてこーおれどご信じねぁ？こー旦那かって疑われる妻[かが]

訳：はぁ、父さん、お前って人はどうしてこう(も)私を信じない？こう(も)旦那に疑われる妻

って世の中さそーいるもんだべが？

というのは世の中にそういるものだろうか？

A：さーなんとﾝだべなー。人ねのごどﾝだばおらも知らねぁたって、めぁなにが嘘つぐづぎ

訳：さぁどうだろうねぇ。人の家のことは私も知らないけれども、お前がなにか嘘をつく時

ってば人がらまなご逸らすがすんま話題変えるどするがのどっちがﾝだってごどﾝだば

には人から目を逸らすかすぐに話題を変えようとするかのどっちかだということならば

わがってだつもりﾝだや？

わかっているつもりだよ？

B：あい、なんだがかなしなー。なしこー長年連れ添って信じられねぁもんだべがー。

訳：もう、なんだか悲しいねぇ。どうしてこう長年連れ添って信じられないものだろうか。

A：そえﾝだばめぁよぐ嘘つぐがらﾝだべ？信じられる人なりでぁごったら普段がら嘘つがねぁ

訳：それはお前がよく嘘をつくからだろう？信じられる人になりたいなら普段から嘘をつかない

えにせー。そーせばなんも別ﾝだごどさねぁたって人かって信じられるや？

ようにしろ。そうすればなにも特別なことをしないとしても(=しなくても)人に信じられるよ？

B：…。なんとしてもいわねぁばねぁ？

訳：…。どうしても言わなければならない？

A：そー怪し動作されればな、聞がねぁわげにもいがねぁべぉん。して、なにしてだ？

訳：そう(も)怪しい動きをされればね。聞かないわけにもいかないだろうさ。それで、何をしていた？

B：…へそぐりためでだどさ銭[じぇん]っこ隠してました。

訳：…へそくりをためていたところにお金を隠していました。

A：なんーだってめぁまだ、やっぱり銭だねぁが。

訳：まったくもうお前ってやつは、やっぱりお金じゃないか。

B：はー、やっぱりめぁどごﾝだばながながだまがされねぁもんだなー、へそぐりも隠されねぁでぁは。

訳：はぁ、やっぱりお前はなかなか騙せないものだねぇ、へそくりも隠せないよ。

A：めぁもまだ、そもそもなしてわんざに銭おれがら隠すって？別にめぁの年金がら下ろした

訳：お前って奴は、そもそもどうしてわざわざお金を私から隠すというのだ？別にお前の年金から下ろした

あじめぁなにに使ったたってなんもいわねぁやおれー。

やつをお前が何に使ったとしてもなにも言わないよ私は。

B：…。んだが。

訳：…。そうか。

A：ん？なにした？

訳：ん？どうした？

B：うﾝ？なにした？おらなもさねぁや？

訳：うん？どうした？私はなにもしないよ？

A：うﾝーん？なしてﾝだべなー。まだなんだがままご逸らされだえんだ気したﾝども。

訳：うーん？どうしてだろうねぇ。またなんだか目を逸らされたような気がしたけど。

B：…気のせーﾝでねぁすか？

訳：…気のせいじゃないですか？

A：なして急に敬語なの使うあんだべなー。

訳：どうして急に敬語など使うんだろうねぇ。

B：…。

訳：…。

A：かー、めぁまさがおれの年金がら下ろした銭まﾝでそごさ隠してだあんだが？

訳：母さん、お前まさか私の年金から下ろしたお金までそこに隠しているのか？

B：あいー、おどーさん、なしてそんだひﾝでごど聞ぐー？そんたごどまﾝで聞がれるってばはー、

訳：あらもう、お父さん、どうしてそんな酷いことを聞く？そんなことまで聞かれるとなれば、

おれなんぼ信じられでねぁあんだべって、かなししてかなししてなもかもなねぁぐなる

私はどれほど信じられていないんだろうって、悲しくて悲しくてしかたがなくなる

でぁはー。

よ。

A：そのわりになんもかなしそーﾝだつらっこさねぁなやな。ほら、はえぁぐんな白状せ。

訳：そのわりにぜんぜん悲しそうな顔をしないんだよねぇ。ほら、早くみんな白状しろ。

そーせばごしゃがねぁﾝでけら。

そうすれば怒らないでくれよう。

B：あい、ほんとにげぁ？言えばほんとにおれめぁかってごしゃがれねぁってもいぐなるあんだ？

訳：あら、本当にかい？言えば本当に私はお前に怒られなくてもよくなるの？

A：…かー、めぁﾝだばほんとに…。はー、なしておらこんたおなこ゚ど結婚した

訳：…母さん、お前は本当に…。はぁ、どうして私はこんな女と結婚した

あんであったっけが…。

んだったっけっか…。

しめぁに

　以上にて、今回の秋田弁講座は終了。

　次は12課です。

　しばらくは助動詞の勉強になります。

　へばまず。

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