第69課:不定疑問詞
みなさん、こんにちは。
今回は、「なにか」「いつか」「どこか」などの疑問詞+か で構成された特殊な疑問詞の秋田弁版を勉強します。
1.不定疑問詞
不定疑問詞は、標準語の「なにか」「どこか」「いつか」のような疑問詞+かで構成された疑問詞のこと、と当テキストでは定義している。
2.秋田弁の不定疑問詞
①秋田弁の不定疑問詞は、「疑問詞+副助詞『が』」によって造られる。
いつか=いつ+か→いづ+が→いづが いつか死ぬぞ?→いづが死ぬど?
いくらか=いくら+か→なんぼ+が→なんぼが いくらかくれ。→なんぼがけでけれ。
どうしてか=どうして+か→なして+が→なしてが どうしてか辛い。→なしてが辛れぁ。
②「どの人か」「何日か」のような、「連体修飾の疑問詞+名詞+か」で構成される不定疑問は、秋田弁では「連体修飾の疑問詞+名詞+が」という構造になる。
どの人か=どの+人+か→どの+人+が→どの人が
幾日か=幾+日+か→なんぼ+日+が→なんぼ日が
どんな理由か=どんな+理由+か→なんだ+理由+が→なんだ理由が
練習問題1:次の()内の疑問詞を不定疑問詞にして、文を完成させよう。
(1)(誰)来たえんだ。(2)(何)分がったごどあるが?(3)これンで(なんぼ)良ぐなったべ。(4)(どご)楽しどごさ行ぎでぁなー。(5)(どれ)一っつ選べ。(6)(いづ)そんだ日も来るなやな。(7)(なして)あれも知ってるえんであった。(8)(なんぼ日)東京さ泊まるあんだどや。(9)(何回)行ったごどあるべ?
3.曖昧記憶の不定疑問
①標準語の「いつだか彼から電話が来ていた」「誰だかが私にくれたんだ。」の様な、思い出せない不定のなにかを表す表現「疑問詞+だか」は、秋田弁で「疑問詞+(ン)だが」と言う。
いつだか=いつ+だか→いづ+ンだが→いづンだが
例:いつだか彼から電話が来ていた。→いづンだがあれがら電話来てあった。
いくらだか=いくら+だか→なんぼ+ンだが→なんぼンだが
例:いくらだかお金を払ってやった。→なんぼンだがお金払ってやった。
どうしてだか=どうして+だか→なして+ンだが→なしてンだが
例:どうしてだか彼に毎日怒られていた。→なしてンだがあれかって毎日怒られであった。
何[なん]だか=何[なん]+だか→※何[なに]+ンだが→何[なに]ンだが(※)
例:彼はなんだかを取りに行ったよ?→あれンだばなにンだがどご取るに行ったや?
※なお、何[なんだが]だと、標準語の「何故か」の意味の「なんだか」の意味になる。
例:なんだか悲しくて。→なんだが悲しして。 誤:何[なに]ンだが悲しして。
②「彼も何日だか泊まっていった。」のような、「連体修飾の疑問詞+名詞+だか」で構成される思い出せない不定のなにかを表す表現は、秋田弁では「連体修飾の疑問詞+名詞+(ン)だが」となる。
幾日だか=幾+日+だか→なんぼ+日+ンだが→なんぼ日[にぢ]ンだが
例:彼も幾日だか泊まっていった。→あれもなんぼ日ンだが泊まっていった。
何人だか=何+人+だか→何+人+だが→何人[なんにん]だが
例:事故で何人だか人が死んだそうだ。→事故ンで何人だが人死んだど。
練習問題2:次の()内の秋田弁を、記憶のあいまいな不定のものを表す表現に直して、秋田弁の文を完成させてみよう。
(1)この時計、(誰)がらもらって来たあんだどや。(2)あれ、今日(何)の日ンだどって聞だンどもな。(3)(どご)の国ンで大っき噴火あったあんだど。(4)(いづ)あれ突然泣ぎ出して、俺らあど月の国さ帰らねぁばならねぁぐなったなのって騒んだごどあった。あのづぎンだばたいしたどでんしたものンだは。(5)(なして)あの日俺あの子ど一緒に帰ってぁぐねぁがったなやな。なしてンであったべが。(6)あすこの学校人少ねぁぐなって、(なんぼ組)閉鎖するごどしたあんだどや。(7)あの人ンだば、(何年)前ぁに死んだはずンだや?
4.不定疑問詞の例外:「なんとが」「なんとがして」
不定疑問詞のうち、作り方が例外又は意味が変わるものに、以下の二つがある。暗記推奨。
①どうにか→なんとが例:どうにか助かった。→なんとが助かった。
②どうにかして→なんとがして例:どうにかして助けないと。→なんとがして助けねぁば。
説明:「なんとが」は「なんと[どう]」+「が」でできた言葉だが、意味は「どうか~てくれ」の「どうか」の他、上記のような「どうにか」の意味もある。この点が例外的である。
「なんとがして」は、「なんとして[どうやって]」+「が」でできた言葉だが、「が」が「なんと」と「して」の間に挿入されている点が例外と言える。意味は「どうにかして」である。
練習問題3:次の()内の標準語を、秋田弁にしてみよう。
(1)(どうにか)してけれでぁ。おらあど疲れだは。(2)(どうにか)期限まンでにでがしたど思ったっけ、まだ新し問題出で来た。(3)あれどご(どうにかして)説得さねぁばなねぁ。(4)(どうにかして)あれどご俺の嫁っこにしてぁたって、なんとがしたもんだやら(※)…。
※「なんとがしたもんだやら」…「どうしたものやら」を表す秋田弁の決まり文句。
練習問題解答:
練習問題1:(1)誰が(2)何が(3)なんぼが(4)どごが(5)どれが(6)いづが(7)なしてが(8)なんぼ日が(9)何回が
練習問題2:(1)誰ンだが(2)何[なに]ンだが/何[なん]だが(3)どごンだが(4)いづンだが(5)なしてンだが(6)なんぼ組ンだが(7)何年だが
練習問題3:(1)なんとが(2)なんとが(3)なんとがして(4)なんとがして
終わりに
以上で今回の勉強もおしまい
ではまたこんど。へばな。
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