第66課:数量表現
みなさん、こんにちは。
今回は数量表現について勉強します。
1.秋田弁の数量表現
原則:秋田弁の数量表現は、原則標準語を秋田弁風に訛らせるだけでいい。
一[いぢ] 六[ろぐ] 七[しぢ] 八[はぢ] 一個[いっこ] 十六[じゅーろぐ]粒 二十[にじゅー]枚 五十分[ごじっぷん] 一人[ひとり] 二人[ふたり] 三人[さんにん]等々
説明:なお、「〇十一~九」という時は、「〇十-一~九」というごく微かな区切りがある。
例:十九→正:じゅー-く(※) 誤:じゅーぐ 五十五→正:ごじゅー-ご 誤:ごじゅーこ゚
※「く」は「きゅー」でもいい。複数の読み方があるのは標準語と同じ。上記のような発音上の区切りがあるのは、要は「〇十」と「九」の複合語として意識されているからであろう。
例外:①「一[いぢ]/六[ろぐ]/八[はぢ]/+羽」→秋田弁では、「いっぱ/ろっぱ/はっぱ」。
雀を一羽も見なくなった。→雀一羽[いっぱ]も見ねぁぐなった。
鶏が八羽いる。→鶏八羽[はっぱ]いる。
六羽のからす→六羽[ろっぱ]のからす
例外:②数え言葉「ひとつ、ふたつ…」は、以下のようになる。
①一つ→一[ひと]っつ ②二つ→二[ふた]っつ ③三つ→三[み]っつ④四つ→四[よ]っつ
⑤五つ→五[いづ]っつ ⑥六つ→六[む]っつ ⑦七つ→七[なな]っつ⑧八つ→八[や]っつ
⑨九つ→九[こごの]っつ ⑩十→十[とー]
補足:「(作業等を)〇人で」→「〇人[にん]して」と言う。「みんなで」は「んなして」。
一人でやるより、みんなでやった方が早い。→一人してやるより、皆してやった方はえぁ。
これは三四人ででは大変だろう。→これンだば三四人してンだば大変だべ。
説明:「〇人で~する」という時の「で」。述語が動作を表す言葉である必要があり、「一人ンで大丈夫ンだ」等を「一人して大丈夫ンだ」とは言えない。なお、当テキストでは皆は「んな」と読む。
練習問題1:次の()内の標準語を、秋田弁にしてみよう。
(1)今年白鳥(一羽)も見ねぁごど。(2)昔俺ら家ンで鶏どご(六羽)飼ってあった。(3)俺ら方の学校ンでンだば、兎(八羽)いるや?(4)わい、薬あど(一つ)よりねぁは。(5)おや、ん前ぁ本(二つ)より持ってねぁなげぁ?(6)服なの、(五つ)もあれば十分だべせぁ。(7)(七つ)の謎どご「七不思議」って言うあんだ。(8)(十)数えだら風呂がら上か゚って良やは。(9)狐さしっぽ(九つ)あればおっかねぁ妖怪ンだ。(10)昔(八つ)首ある大っき蛇いであったど。(11)(六つ)足あれば昆虫ンだ。(12)あの子今年ンで(三つ)ンだな。(13)おや、皿(四つ)よりねぁ。なしてンだべ?(14)めぁ一人(で)やったな?―なも、(みんなで)協力してやった。(15)二人(で)泣であった。
2.秋田弁の日付表現
原則:標準語のそれを、ただ秋田弁風に訛らせればいい。
一日→一日[ついだぢ] 十二日[じゅー-ににぢ] 十五日[じゅー-ごにぢ]
六日→六日[むいが] 十六日[じゅー-ろぐにぢ] 二十九日[にじゅー-くにぢ]
七日→七日[なのが] 二十八日[にじゅー-はぢにぢ] [にじゅー-きゅーにぢ]
九日→九日[こごのが] 三十一日[さんじゅー-いぢにぢ] 等々
説明:標準語を訛らせただけなので、十四日[じゅーよんにぢ]を十四日[じゅーよっか] と言ったり、十七日[じゅーしぢにぢ]を十七日[じゅーななにぢ]と言ったり、十九日[じゅーきゅーにぢ]を 十九日[じゅーくにぢ]と言ったりすることがあるのも同じである。
なお、十九日が「じゅーぎゅーにぢ」「じゅーぐにぢ」とならないことについては、本課の最初の説明のところで述べた通り。つまり、発音の区切りが「十-九日」だからである。
例外:①「(話題にしている/なっている月・週の)~[数字]日」→「~日の日」と言う。
君、来週の十五日休みか?→ん前ぁ来週の十五日の日休みンだが?
君、(今月の)十二日は暇か?→ん前ぁ十二日の日暇ンだが?
先月の三十日は休みだっただろう?忘れたのかい?
→先月の三十日の日ってば休みンであったべ?忘れだなげぁ?
説明:「毎月の~日」のような普遍的な話でもなく、「○月×日」のようなきっかりした日付を言うわけでもなく、単に今話題に上がっているその月・週の「~日」を言い表したい時は、「~日の日」と言う習慣がある。
例外:②「(話題にしている/なっている週の)~曜日」→「~曜日の日」と言う。
うわ、(今週の)火曜日仕事だった。→わい、火曜日の日仕事ンであった。
君来週の月曜日暇あるかい?→ん前ぁ来週の月曜日の日暇あるが?
説明:「(今週の)火曜日」を「火曜日の日」と訳してあるが、別に「火曜日の日」は必ず今週の火曜日を指すわけではない。話者の話題となっている火曜日を指すに過ぎない。なので文脈によっては来週の火曜日であることも、来月の火曜日であることもありえる。
練習問題2:次の()内の標準語を、秋田弁にしてみよう。但し、いずれも普遍的な話ではなく、話題になっている日や曜日を言っているものとする。
(1)子供方今月の(一日)がら学校始まるど。(2)来週(二日)休暇取るがな。(3)ん前ぁ(三日)なにが予定あるあんだが?(4)あーそっか。(二十日)ど(二十一日)ンだば祭りンだものな。せば車ンで行ぐなンだばやめだ方いべな。(5)(水曜日)もし用事ねぁごったら、どさが遊ぶに行がねぁが?(6)俺来週(火曜日)病院さ行がねぁばねぁ。(7)ん前ぁ(金曜日)仕事休みンだ?
練習問題解答:
練習問題1:(1)一羽[いっぱ](2)六羽[ろっぱ](3)八羽[はっぱ](4)一っつ(5)二っつ(6)五っつ(7)七っつ(8)十[とー](9)九っつ(10)八っつ(11)六っつ(12)三っつ(13)四っつ(14)して・んなして(15)して
練習問題2:(1)一日の日(2)二日の日(3)三日の日(4)二十日の日・二十一日の日(5)水曜日の日(6)火曜日の日(7)金曜日の日
終ぁに
これンで今日の勉強は終ぁンだす。
へばまだ。まずな。
関連ページ
- 第1課(新版):人代名詞
- このページでは、秋田弁の人代名詞と標準語の人代名詞との対応関係について学びます。
- 第2課(新版):代名詞②「物事/場所/方角代名詞および接尾語」
- 当サイトは、北東北の日本海側に位置する「秋田県」の方言「秋田弁」を勉強・学習したい人向けに設置するサイトです。いつか方言が見直される日に役立つサイトとなるよう努力していきたいと思います。
- 第3課(新版):指示副詞・指示形容詞
- 当サイトは、北東北の日本海側に位置する「秋田県」の方言「秋田弁」を勉強・学習したい人向けに設置するサイトです。いつか方言が見直される日に役立つサイトとなるよう努力していきたいと思います。
- 第4課(新版):形容詞①:「終止形の作り方」
- 当サイトは、北東北の日本海側に位置する「秋田県」の方言「秋田弁」を勉強・学習したい人向けに設置するサイトです。いつか方言が見直される日に役立つサイトとなるよう努力していきたいと思います。
- 第5課(新版):形容詞②:「形容詞の活用」
- 今回は秋田弁講座第5回。秋田弁の形容詞の活用について、語彙の置き換えを通して学んでいきます。
- 第6課(新版):形容動詞
- 今回は秋田弁講座第6回。秋田弁の形容動詞について勉強します。
- 第7課(新版):動詞①:「五段活用動詞①」
- 秋田弁講座第7回。今回は、秋田弁の五段活用動詞について勉強します。
- 第8課(新版):動詞②:「五段活用動詞②」:「イ音便・促音便・撥音便」
- 秋田弁講座第8回。今回は、秋田弁の五段活用動詞の音便について勉強します。
- 第9課(新版):動詞③:「上一段活用・下一段活用」
- 秋田弁講座第9回。今回は、秋田弁の上一段動詞と下一段動詞について勉強します。
- 第10課(新版):動詞④:「変格活用」
- 秋田弁講座第10回。今回は、秋田弁の変格活用動詞について勉強します。
- 第11課(新版):動詞⑤:「いる」「やる」「くれる」
- 秋田弁講座第11回。今回は、秋田方言の動詞のうち、標準語と使い方のやや異なるものについて勉強します。
- 第12課(新版):助動詞①:指定「だ」
- 秋田弁講座第12回。今回は、指定の助動詞「だ」について学びます。
- 第13課(新版):助動詞②:受動「れる」「られる」
- 秋田方言講座第13回目。今回は、助動詞「れる」「られる」の勉強と相成ります。
- 第14課(新版):助動詞③:使役「せる」「させる」
- 使役の「せる」「させる」の秋田弁版を学びます。
- 第15課(新版):助動詞④:打消「ない」
- 助動詞「ない」の秋田弁を学びます。
- 第16課(新版):助動詞⑤:希望「たい」
- 助動詞「たい」に対応する秋田の言葉を学びます。
- 第17課(新版):助動詞⑥:過去・完了「た」
- 完了「た」を秋田弁でどういうかを学びます。
- 第18課(新版):助動詞⑦:推量①「だろう」
- 推量「だろう」の秋田方言を勉強します。
- 第19課(新版):助動詞⑧:推量「らしい」
- 「らしい」に当たる秋田弁の勉強です。
- 第20課(新版):助動詞⑨:推量・比況「ようだ」
- 推量・比況の「ようだ」に対応する秋田の言葉を学びます。
- 第21課(新版):助動詞⑩:比況「のようだ」
- 秋田方言の比況「のようだ」を学びます。
- 第22課(新版):助動詞⑪:比況「かのようだ」
- 秋田の言葉で「かのようだ」をどういうかを勉強します。
- 第23課(新版):助動詞⑫:断定・説明の助動詞「のだ」
- 断定「のだ」に当たる秋田弁の学習です。
- 第24課(新版):助動詞⑬:断定・説明の助動詞「んだ」
- 断定「んだ」に対応する秋田方言を学習しましょう。
- 第25課(新版):助動詞⑭:推量「そうだ」
- 推量「そうだ」の秋田弁版の学習です。
- 第26課(新版):助動詞⑮:「っけ」「じゃない」
- 「~っけ」「~じゃない」に当たる秋田方言の勉強です。
- 第27課(新版):助動詞⑯:敬譲「す」
- 秋田方言の敬語の「す」について学びます。
- 第28課(新版):補助動詞・補助形容詞①
- 秋田の言葉における補助動詞・補助形容詞について学びます。
- 第29課(新版):補助動詞・補助形容詞②
- 前回に引き続き、補助動詞補助形容詞の勉強です。
- 第30課(新版):可能表現①:能力可能
- 秋田方言の可能表現のうち、能力可能について勉強しましょう。
- 第31課(新版):可能表現②:状況可能①
- 秋田弁の可能表現のうちの状況可能について学習します。
- 第32課(新版):可能表現③:状況可能②
- 前回に引き続き、秋田のことばにおける状況可能表現を学びます。
- 第33課(新版):可能表現④:属性可能
- 秋田方言の属性可能の表現について学びましょう。
- 第34課(新版):動詞の将然形
- 秋田方言にみられる「将然形」について学習しましょう。
- 第35課(新版):擬声語・擬態語
- 秋田弁の擬声語・擬態語の解説です。
- 第36課(新版):格助詞①
- 秋田方言の格助詞について学習します。
- 第37課(新版):格助詞②
- 引き続き秋田の格助詞の勉強です。
- 第38課(新版):格助詞③
- なおも格助詞について解説します。
- 第39課(新版):格助詞④:引用の格助詞
- 秋田弁における引用の格助詞についての解説です。
- 第40課(新版):副助詞①
- 今回は秋田方言の副助詞の学習です。
- 第41課(新版):副助詞②
- 前回に引き続き、副助詞の勉強です。
- 第42課(新版):格助詞と副助詞
- 秋田方言における格助詞と副助詞の併用について記述します。
- 第43課(新版):接続助詞①
- 秋田弁の接続助詞の勉強です。
- 第44課(新版):接続助詞②
- 秋田弁の接続助詞の学習です。
- 第45課(新版):終助詞①:「よ」
- 標準語の「よ」に当たる秋田の言葉の勉強です。
- 第46課(新版):終助詞②:「ぞ」「ね」「なぁ」「もの」
- 秋田弁における「ぞ」「ね」「なぁ」「もの」の意味を表す終助詞の学習となります。
- 第47課(新版):終助詞③:「そうだ」「そうな」
- 伝聞「そうだ」「そうな」に相当する秋田の言葉を勉強しましょう。
- 第48課(新版):終助詞④:「か」
- 疑問「か」の意味を表す秋田弁を学びます。
- 第49課(新版):終助詞⑤:「のか」
- 疑問「のか」に当たる秋田の言葉を学習しましょう。
- 第50課(新版):終助詞⑥:「かい」
- 疑問「かい」に当たる秋田方言の表現を学習します。
- 第51課(新版):終助詞⑦:「かな」
- 今回は、標準語→秋田弁の変換練習を通じて、終助詞「かな」について勉強していきます。
- 第52課(新版):終助詞⑧:「かよ」
- 標準語→秋田弁の翻訳作業を通じて、終助詞「かよ」の勉強をします。
- 第53課(新版):終助詞⑨:「よね」「のよね」
- いつも通り標準語から秋田弁への変換翻訳作業で秋田弁の勉強。
- 第54課(新版):終助詞⑩:「って」
- 標準語→秋田弁の変換翻訳を通じて「って」について勉強。
- 第55課(新版):終助詞⑪:勢いを強める終助詞秋田弁独自の終助詞
- 第55課。秋田弁独自の終助詞について、標準語→秋田弁翻訳を通じて学習。
- 第56課(新版):間投助詞
- いつも通りのやりかたで秋田弁の勉強。
- 第57課(新版):感動詞①:「感動」
- 標準語→秋田弁変換で感動詞について勉強。
- 第58課(新版):感動詞②:「呼びかけ」「掛け声」
- 前回に引き続き、秋田弁の感動詞の学習。
- 第59課(新版):感動詞③:「応答」
- 応答の感動詞について、いつもどおり標準語-秋田弁間の変換翻訳を通じて学習。
- 第60課(新版):感動詞④
- 感動詞4回目。例の如く秋田弁標準語変換翻訳を通じて学習。
- 第61課(新版):特殊用言「んだ」
- 特殊用言「んだ」について勉強しましょう。
- 第62課(新版):接続詞①
- 秋田弁の接続詞の勉強です。
- 第63課(新版):接続詞②
- 前回に引き続き、秋田方言の接続詞についてあつかいます。
- 第64課(新版):名詞①
- 秋田弁の名詞の中でも、やや特殊な使い方をする名詞について学習をしていきます。
- 第65課(新版):名詞②
- 前回に引き続き、秋田弁のやや特殊な名詞についての勉強です。
- 第67課:疑問詞
- 秋田方言の「疑問詞」を勉強します。
- 第68課:疑問詞疑問文②
- 秋田方言における疑問詞疑問文について勉強しましょう。
- 第69課:不定疑問詞
- 秋田弁の不定疑問詞の勉強。やり方はいつも通り標準語→秋田弁の変換作業による。
- 第70課:間接疑問文
- 秋田方言における間接疑問文を学習します。
- 第71課:秋田弁の「いる」「いた」「ている」「ていた」
- 今回は、秋田弁の「いる」に関する表現について、理解を深めたいと思います。
- 第72課:音韻変化①「れ」→「え」
- 今回は、秋田弁の音韻変化のうち、「れ」が「え」に変わるものを学びます。
- 第73課:音韻変化②「せ」→「へ」
- 今回は、「せ」が「へ」になる発音の変化について学びます。
- 第74課:音韻変化③「る」→「っ」
- 前回に引き続き、秋田市内にみられる発音の変化に関する勉強です。今回は「る」→「っ」となるもの。
- 第75課:音韻変化④:「ら」「る」の省略
- 今回は、「ら」「る」が省略される現象について学びます。
- 第76課:音韻変化⑤「撥音化」
- このページでは、秋田市の秋田方言にみられる撥音化について学ぶ。
- 第77課:音韻変化⑥「指示語の音韻変化」
- このページでは秋田市内の秋田弁で見られる、指示語における発音の変化について勉強します。
- 第78課:音韻変化⑦:格助詞「の」の省略
- 今回は、格助詞「の」の省略という現象について勉強します。
- 第79課:「言う」の省略表現①
- 今回は、秋田市においてよく見られる、「言う」の省略表現について勉強します。
- 第80課:「言う」の省略表現②
- 前回に引き続き、言うの省略表現を学びます。
- 第81課:秋田弁の多様性①
- 今回は、今まで習った表現の別バージョンを学びます。
- 第82課:秋田弁の多様性②
- 前回に引き続き、今まで習った表現の別バージョンを学びます。
- お知らせ
- お知らせ
- 第83課:慣用表現①:単語
- 第84課:慣用表現②:熟語①
- 第85課:主な慣用表現③
- 第86課:主な慣用表現④:疑問詞を用いた慣用表現