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第70課(新版):間接疑問文

第70課:間接疑問文

 みなさんこんばんは。

 

 今回は、秋田方言における間接疑問文の学習となります。ややめんどうですが、がんばりましょう。

1.間接疑問文とは

 

 疑問文を文の主語・目的語・補語などとして文の中に組み込む文型を、英文法などで「間接疑問文」という。秋田弁にもこの間接疑問文に当たる表現はある。今回は秋田弁の間接疑問文について学習する。

 

 標準語間接疑問文の例:下線部は、文の中に組み込まれた疑問文を指す。

性格が良いどうかは問題ではない。印象が良いどうかが問題なのだ。

彼がまだ生きているのかを手紙で尋ねてきたのであった。

性格がどうなのかは問題ではない。印象がどうなのかが問題なのだ。

彼が今どこにいるを手紙で尋ねてきたのであった。

 

2.秋田弁の間接疑問文

 秋田弁の間接疑問文は、標準語の間接疑問文中の疑問の「か」→「が」、「のか」→「なが/なンだが/あんだが」と置き換えればそれで完成する。

例①:性格良い悪いは問題ではない。印象が良い悪いが問題なのだ。

性格(か゚)悪りンだば問題ンでねぁ。印象(か゚)良悪りか゚問題ンだあんだ。

例②:まだ生きているのかを手紙で尋ねてきたのであった。

あれ(か゚)まンだ生ぎでるなが(どご)手紙ンで尋ねできたなンであった。

あれ(か゚)まンだ生ぎでるあんだが(どご)手紙ンで尋ねできたなンであった。

あれ(か゚)まンだ生ぎでるなンだが(どご)手紙ンで尋ねできたなンであった。

注意!「連体形+のか」を文に組み込む時秋田弁では「連体形+なが」「連体形+あんだが」「連体形+なンだが」の三種類がある。また、組み込む文の主格の「か゚」は、秋田弁では普通省略される

 上記のルールは、疑問詞を含む疑問詞疑問文でも全く変わることはない。

例①:性格がどうのかは問題ではない。印象がどうのかが問題なのだ。

性格(か゚)なんとンだながンだば問題ンでねぁ。印象なんとンだあんだがか゚問題ンだなンだ。

(赤字は「なが」「あんだが」「なンだが」いずれでも可。これら三つは相互に代替可能。)

例②:彼が今どこにいるを手紙で尋ねてきたのであった。

あれ(か゚)今どごンでいる(どご)手紙ンで尋ねできたなンであった。

 

なお、実際の秋田弁では、「あれまンだ生ぎでるあんだがどご手紙ンで尋ねできたなンであった。」「あれ今どごンでいるがどご手紙ンで尋ねできたなンであった。」のような「『~(な/なンだ/あんだ)が』+『どご』…」の構造の間接疑問文において、格助詞「どご」を使うことは普通ない。必ず省略する。

3.秋田弁の「~かどうか」に当たる表現

 標準語の間接疑問文では、「いいかどうか」「行くかどうか」「彼なのかどうか」のように、「~かどうか」という表現が聞かれるが、秋田弁ではこの「どうか」に当たる言葉はない。

 

 代わりに、秋田弁では以下のように、標準語より具体的に表現することで同じ意味を表す。

行く(の)かどうか行ぐ(な)が行がねぁ(な)が 寒い(の)かどうか寒び(な)が寒びぐねぁ(な)が

綺麗である(の)かどうか綺麗ンだ(な)が綺麗ンでねぁ(な)が

彼である(の)かどうかあれンだ(な)があれンでねぁ(な)が

いい(の)かどうかい(ー)(な)がいぐねぁ(な)が

ある(の)かどうかある(な)がねぁ(な)が 行ける(の)かどうか行ぐにい(な)が行がれねぁ(な)が

「い(ー)(な)が悪り(な)が」は「いい(の)か悪い(の)か」の意。「い(ー)」の打消はあくまで「いぐねぁ」。

説明:ご覧の通り、大体は「~か、~ない(の)か」という表現形式で言い表す。⑥⑦のように、特定の否定表現で打消を表す場合はそちらを使うことになる。なお、上記の「なが」はいずれも「~なンだが」「~あんだが」でもよい

 

練習問題:次の()内の標準語を、秋田弁にしてみよう。但し、下の参考を用いて答えること。。

(1)(生きた方がいいか死んだ方がいいか)、それか゚問題ンだ。(2)(私がお前を好きかどうか)なの、そんだごどなんとンでもいべせぁ。(3)(彼が行くかどうか)ンだばなんとンでもいあんだ。(4)(彼が本気なのかどうかを)、ちゃんと確かめねぁばならねぁな。(5)(これでよかったのか、どうなのか)ンだば、今こごンで考えだたって分がらねぁ。(6)(誰に責任があるのか)ンだば、今問題にするごどンでねぁべせぁ。(7)俺ら、(お前がなにが好きで、どこへ行きたくて、どんなことを考えていて、どのような夢を持っているのかを)知りでぁあんだ。(8)(お前が誰か)ンだば俺も分がらねぁ。んだンども(お前がなにをしようとしているか)ンだば分がる。(9)こごさ(あるかどうか)もわがらねぁあんだ。(10)(そうなのかどうか)はっきり言えでぁ。(11)こごンで(やれるかどうか)ンだば聞がねぁばわがらねぁ。(12)これンで(いいかどうか)、確認すれ。参考:①主格「が」→省略しよう。②私→「俺」に統一しよう。③お前→「お前ぁ」に統一しよう。④彼→あれ ⑤よかった→いがった ⑥そうではない→んでねぁ ⑦誰に→誰さ ⑧どんなこと→なんだごど ⑨どのような夢→なんだえんだ夢 ⑩~ている→~てる ⑪しようとしている→するどしてる

練習問題解答

(1)生ぎだ方いが死んだ方いが(2)俺お前ぁどご好ぎンだが好ぎンでねぁが(3)あれ行ぐが行がねぁが(4)あれ本気ンだなが、本気ンでねぁなが(5)これンでいがったなが、なんとンだなが(6)誰さ責任あるなが(7)お前ぁなに好ぎンで、どごさ行ぎでぁして、なんだごど考えでで、なんだえんだ夢持ってるなが(8)お前ぁ誰ンだが・お前ぁなにするどしてるが(9)あるがねぁが(10)んだなが、んでねぁなが(11)やるにいが、やられねぁが(12)いーがいぐねぁが

解説:「なが」は「なンだが」「あんだが」でもよい。なお、本当は、「俺」は「俺ら」でもいいし、「お前ぁ」は「ん前ぁ」「前ぁ」でもいいし、「誰さ」は「誰に」でもいいし、「持ってる」は「持ってだ」でもいいし、「するどしてるが」は「するどしてだが」でもいい(「~てだ」については次の第71課参照)。敢えて上の「解答用の参考語彙」で使用語彙を限定したのは、単に答え合わせの便宜を図るためである。

終いに

 これにて今回の勉強は終いです。

 

 ではまた。まずな。

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前回に引き続き、今まで習った表現の別バージョンを学びます。
お知らせ
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第84課:慣用表現②:熟語①
第85課:主な慣用表現③
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