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第16課:「どこ」の派生表現・音韻変化「せ」→「へ」

第16課:「どこ」の派生表現・音韻変化「せ」→「へ」

 みなさん、こんばんは。

 

 今回は、タイトルにある通り、「どご」の派生語と「せ」が「へ」に変わる発音上の現象について勉強します。

本文:

大輔:はー、世の中変わったもんだごど

大輔:はぁ、世の中変わったものだなぁ。

秋子:…なになにしたな?いぎなりそんだ片息つで。

秋子:…なに、どうしたの、いきなりそんな溜息ついて。

大輔:ん?なも、最近、旅行行ぐってば、人ンだげンでねぁぐ、犬なの、ペットどごも連れでぐ人いるっていうがらせぁ、ずいぶん時代変わったあんだなーど思って。昔ンだば考えらえねぁごどンだべ、ペットどごも旅行連れでぐなの

大輔:うん?いや、最近、旅行に行くとなれば、人だけでなく、犬など、ペットをも連れていく人がいるというからさ、ずいぶん時代が変わったんだなぁと思って。昔なら考えられないことだろう、ペットをも旅行に連れていくなんて。

秋子:まずな。子供どごンだば連れでぐごどもあったたって、飼ってるどごも連れでぐなの俺らがだ子供の時分だば考えらえねぁごどンだがもしえねぁ

秋子:まぁね。子供は連れていくこともあったけど、飼っている犬も連れていくなんて、私たちが子供の頃なら考えられないことかもしれないわ。

大輔:考えてみればせぁ、世の中ずいぶん変わったもんだやな。人の習慣もんだし、社会もんだ。今ンでごそ当だり前ぁみでぁになってだンどもせぁ、いづンでもどごンでもだれンでも連絡取るにい携帯電話ンだの、遠ぎどごンでいだ顔合わなか゚ら会話するにいテレビ電話ンだのって、昔の人がらあど魔法みでぁんだもんだやな

大輔:考えてみるとさ、世の中ずいぶん変わったもんだよな。人の習慣もそうだし、社会もそうだ。今でこそ当たり前のようになっているけどさ、いつでもどこでもだれとでも連絡を取ることができる携帯電話だの、遠いところにいる人と顔を合わせながら会話することができるテレビ電話だのって、昔の人からすればもう魔法のようなもんだよね。

秋子:まずな。…しかしー、不思議ンだもんだな。昔ンだば想像もつがねぁえんだ社会なったのに、いざそーなってみれば簡単に当だり前ぁのごどどして慣れでしまうもの

秋子:まぁね。…それにしても、不思議なものよね。昔なら想像もつかないような社会になったのに、いざそうなってみれば簡単に当たり前のこととして慣れてしまうもの。

大輔:本当にんだな。人の適応力って、たいしたもんだ。このあいンだテレビンで何十年後の未来ンで、世の中なんとなってるが特集番組やってだンども、正直なんだ凄け゚予想見らえでも、なんも「絶対にねぁどって否定さえねぁがった。

大輔:本当にそうだな。人の適応力というのは、たいしたもんだ。このあいだテレビで何十年後の未来で、世の中がどうなっているかという特集番組をやっていたけれど、正直どんな凄い予想を見せられても、全く「絶対にない」と否定できなかったよ。

語釈:

     片息[かだいぎ]つぐ…溜息をつく。例文:なした、片息つで? なんもうまぐいがねぁして、毎日片息ばりつでだは。

     なの…など。なんて。例文:歌っこなの歌ってなに楽しって? 俺なの昨日がらずっと知ってあったや?

     ってば…「ってなれば」の略。「になると(主に時間)」「となると(主に事情)」の意。例文:今九時ってば出がげるがら、ん前ぁは下ンでいでけれ。 ん前ぁも知らねぁってば、せばあど誰さ聞げばい?

     せぁ…さ。「私さ、昔さ、あなたのことがさ、好きだったんだよね。」のような、文の合間合間に入れるあれ。例文:俺せぁ、昔せぁ、ん前ぁどごせぁ、好ぎンであったあんだは。 俺らせぁ、今日せぁ、八時頃せぁ、出がげだっけせぁ、向[むげ]ぁの家の近ぐンでせぁ、保坂さんにせぁ、ばったり会ったンどもせぁ、なんもせぁ、話すごどもねぁしてせぁ、すく゚別えでしまった。

     がもしえねぁ…かもしれない。例文:あれ、本当ンだば俺らがだど一緒に行ぎでぁがったあんだがもしえねぁなー。―んだがもしえねぁな。んでねぁがもしえねぁンども。 行ぐがもしえねぁし、行がねぁがもしえねぁ。まず今すく゚にンだばはっきり言わえねぁは。

     ()だのB()だの…AだのBだの。例文:あれンだば家ンで犬ンだの猫ンだのいっぺぁ飼ってるえんだ。 夏なれば虫ンだの雨ンだのなんだのって、まんず鬱陶ししてんたは。

     しかし()…それにしても。一つの話題が終わってからしばらく間があって、それからまた別の話題を切り出そうとする時に使うあれ。例文:…しかし、秋田人少ねぁぐなったごど。 しかしー、あの人もながなが聞かねぁ人ンだやな。俺らなんぼ説得してもなんも聞ぐどさねぁがったは。

     どして…として。例文:それンだば親どして駄目ンだ。 それンだば人どしておがしべしゃ。

     って…というものは。例文:世の中って、そんだもんだ。 学生って、そーするもんだべ。

     で…「っていう」の省略形。例文:太郎で人さきた来てあったや? 知らねぁでごどあるってげぁ?ん前ぁのごどンだべ?

     なんも~ねぁ…①なにも~ない。例文:こごさンだばなんもねぁや? 長生ぎしたたってなんもいーごどねぁねぁがは。 あれなんも知らねぁえんだな。②まったく~ない。例文:今年なんも雪降ねぁごど。 あれンだばなんももの喋ねぁしておもしれぐねぁは。 年行ったっけなんもあげねぁぐなってしまったどや。

―今日の学習―

1.「どこ」の派生表現

 秋田弁の「どご」は、単独では対象「を」の意味を表すが、それ以外の用法として、「どごも」「どごンだば」の形で、「(動作・感情の対象の人・動物)も・は」の意味を表すこともできる。

 

a.(動作・感情の対象の人・動物)も」→「どごも」とも言う。

例:私誘って頂戴。→俺/どごも誘ってけれ。 犬好きだ。→犬/どごもどごも好ぎンだ。

 

b.(動作・感情対象の人・動物)は」→「どごンだば」とも言う。

例:彼誘うのに、私誘わないの?→あれンだば/どごンだば誘うのに、俺ンだば/どごンだば誘わねぁなが? 犬好きだけど、猫嫌いだ。→犬ンだば/どごンだば好ぎンだたって、猫ンだば/どごンだば嫌いンだ。

説明:「犬も連れて行く」「犬は連れて行かない」「犬も好きだ」「犬は嫌いだ」のような、動作の対象や感情の対象を表す「も」「は」は、秋田弁では「どごも」「どごンだば」という表現も使えるということ。

注意!:どのみち「どご」の派生語というのは、単独で使う「どご」と同様に、普通は人や動物を対象にする時しか使わない。この点は、次の「どっから」「どさ」も同じ。

 

補足:同じく、動作対象「から」「に/へ」の意味では、以下のような言い方もできる。

c.(動作対象の人・動物)から」→「どっから」と言うこともある()

例:太郎からお金を借りて来た。→太郎がら/どっから銭借えで来た。

説明:もともとは「どご+がら」だったのだろうけれども、実際には「どっから」の形以外、私は聞いたことはない。なお、この「どっから」は、頻度的には滅多に聞かない印象を受ける(個人的な印象)

 

d.(動作対象の人・動物)/へ」→「どさ」ともよく言う。

例:太郎お金を貸した。→太郎/どさ銭貸した。

説明:これも「どごさ」が縮まって「どさ」になったのだろうけれども、「どごさ」と言うのは、私は聞いたことがない。なお、「どさ」はよく使われる印象を受ける(個人的な印象)

 

2.音韻変化「せ」→「へ」

 秋田市の秋田弁では、しばしば「せ」が「へ」と発音される。

 

細かく分けると、そのような変化がみられるのは、基本的には以下のような場合。

 

①動詞のうち、終止形が「-せる」となるもの→「せ」の部分が「へ」に。

例:任れ→任れ 寄ねぁ→寄ねぁ 見でぁ→見でぁ 寝る→寝る 等々

 

②動詞の仮定形「-せば」→「-へば」に。

例:話ば→話ば まがば→まが() 勉強ば→勉強ば 等等

※:「まがす」は、水など液体上のものを床やテーブルなどに「こぼす」「ぶちまける」ことを言う秋田弁。

 

③動詞の命令形「-せ」→「-へ」に。

例:話→話 下ろ→下ろ 我慢→我慢 等々

 

④助動詞「せる」「らせる」→「へる」「らへる」に。

例:知らる→知らる 書がねぁ→書がねぁ 寝られ→寝られ 考えらだ→考えらだ 等々

 

⑤その他「せば[じゃあ]」「せばなー[じゃあね]」→「へば」「へばなー」

例:ば→ば ばなー→ばなー

 

 この「せ」→「へ」は、いつも必ず起こるというようなものではない。ランダムに、そうなったりならなかったりする不安定な現象である。まぁ話者の気分次第ということなのだろう。

 

 

終ぁに

 これにて今日の勉強も終わりです。

 

 いちおうこまごまとは書きましたが、会話篇は見聞きした時に理解できればいいというのが目標。

 

 なので今回の学習では、①標準語の「も」「は」「から」「に」は、時に秋田弁で「どごも」「どごンだば」「どっから」「どさ」とも言われるんだよーっていうのと、②秋田弁だと「せ」という発音が「へ」になることも多いんだぜ☆ということの2点だけ抑えれてしまえば、まぁいんじゃないかなと思います。

 

 あとは、語釈の部分は太字だけは覚えるようにしましょうってところですね。よく使われる表現ですので。

 

 ともあれ今回はこのへんで失礼します。へばな。

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