第4課:形容詞語幹の作り方・形容動詞の活用・準体助詞「あじ」「な」
みなさんこんばんは。
今回は、形容詞語幹作成法と準体助詞「あじ」「な」、そして形容動詞の活用について学びます。
本文:赤字は今日の学習の項目。黄色は既に習ったもの。
太郎:わい、もーこんでに暗れぁぐなった?このこ゚ろ暗れぁぐなるな早えぁなー。
太郎:うわ、もうこんなに暗くなったの?このごろ暗くなるのが早いなぁ。
花子:それンだばんだべ。あど秋ンだあんだもの。冬至過き゚るまンで、日ーンだば短げぁぐなるばりンだや?
花子:それはそうでしょう。もう秋なんだもの。冬至が過ぎるまで、日は短くなるばかりよ?
太郎:なんと、もーそんだ季節げぁ…早えぁものンだごど。ついこのあいンだまンで、暑[あ]っちー、暑っちどって騒んであったあじな。この分だば、涼し、涼しって言ってられるなも今ンだげンだな。
太郎:なんと、もうそんな季節かい…早いものだなぁ。ついこのあいだまで、暑い、暑いと騒いでいたのにな。この分じゃあ、涼しい、涼しいと言っていられるのも今だけだな。
花子:んだな。秋過き゚で、今度まだ冬なれば寒びぐなるばりンだもの。
花子:そうね。秋が過ぎて、今度また冬になれば寒くなるばかりだもの。
太郎:あー、まだ冬なるなげぁ…冬ンだばんたなー、俺ら寒びなんた。早えぁぐ春夏なってけねぁものンだべが。早えぁぐまだ、みんなして花見したり、海さ行ったり、祭りやったりして騒き゚でぁものンだ。
太郎:ああ、また冬になるのかい…冬は嫌だなぁ、私は寒いのが嫌だ。早く春や夏になってくれないもんかねぇ。早くまた、みんなで花見をしたり、海に行ったり、祭りをやったりして騒ぎたいものだ。
花子:ん前ぁンだば賑やがンだな好ぎンだものな。んだンども秋冬もそー悪り季節ンでねぁや?静がンで落ぢ着ぎあって、本読むにちょーンど良[い]し、月見するなも風情ンだねぁが。
花子:あんたは賑やかなのが好きだものね。だけど秋や冬もそう悪い季節ではないわよ?静かで落ち着きがあって、本を読むのにちょうどいいし、月見するのも風情じゃないの。
太郎:…花子、俺らん前ぁみでぁんだ風情理解でぎる育ぢ良[い]あじンでねぁがら、そーいうあじンだば分がらねぁでぁ。
太郎:…花子、私は君のような風情を理解できる育ちの良いやつではないから、そういうのは分からないよ。
語釈:太字は今回の重要単語。黄色は今までの学習でもう習ったもの。
①~な→~の。用言の名詞化。例文:俺ら甘めぁな好ぎンでねぁ。 外さ出るな億劫[おっくー]ンだ。②はえぁ→はやい。例文:ん前ぁ足速えぁなー。 時間経づな早えぁものンだごど。③(ン)だば→は。例文:冬ンだば寒びたって、秋ンだばそんでに寒びぐもねぁ。 俺ンだば大丈夫ンだがら心配[しんぺ]ぁするな。④んだべ→そうだろう。例文:んだべんだべ?これンだばながなが難しあんだ。⑤あど→もう。例文:今日ンだばあど疲れだ。 あれンだばあど帰ったや?⑥~[名詞](ン)だあんだ→~なのだ。例文:それンだば俺のせーンだあんだ。⑦ばり→ばかり。例文:野菜ばり食ってる。 あの子さばり優しぐする。⑧や?→よ?例文:俺あど行ぐや? 今日ンだば寒びや?コート着ていげ。⑨げぁ→かい。質問の焦点となる言葉のみを残した、省略した疑問文に使うのが普通。例文:学校まンでげぁ? そんでにげぁ?⑩ごど→なぁ。例文:ん前ぁまだよぐ働ぐごど。 あー、いがったごど、ん前ぁ今日家[え]ンでいでけで。⑪暑っち→暑い。例文:夏ンだば暑っちな当だり前ぁンだ。 今日暑っちなー。⑫~あじな→~のにな。例文:はー、せっかぐん前ぁのために買ってきたあじな。 あれも可哀想ンだごど。あれもあれなりに頑張ってるあじな。⑬(ン)だげ→だけ。例文:晩こ゚飯これンだげンで良な? 俺ンだげこごンでいだたってなんもならねぁべせぁ。 ⑭んだな→そうだね。そうね。例文:んだな。その方良あんだがもしれねぁ。 今日ンだば寒びなー。―んだな。⑮んた→[形容詞]嫌だ。例文:働ぐなだんだんにんたぐなってきた。 仕事んたば辞めれ。 んたぐねぁごったら続げでけれ。 本当にあの仕事ンだばんたがった。⑯~てけねぁ:~てくれない。例文:ん前ぁ行ってきてけねぁ? あれ最近俺どご相手[あで]してけねぁ。⑰みんなして:みんなで。「~人して」の特殊版。例文:みんなして俺どごいじめる。 みんなして笑ったものンだ。⑱んだンども:けれども。だけど。だが。例文:九時に会う約束ンでずっと待ってあった。んだンどもあれ結局来ねぁがった。 俺もそーするつもりンであった。んだンどもそれンだげの銭[じぇん]ねぁしてされねぁがった。⑲~[名詞](ン)だねぁが:~じゃないか。例文:おや、太郎ンだねぁが!なしてめぁこさ居だ? あれ熊ンだねぁが。犬ンでねぁや?⑳みでぁんだ:みたいな。例文:犬みでぁんだ顔 猫みでぁんだ気まく゚れンだ人㉑がら:から。例文:危ねぁがら気ーつけれ。 幸せなりでぁがら頑張るなンだ。 今がら行ぐな?㉒でぁ:(尻下がりの主張の強い感じの)よ。例文:今日ンだば寒びぐねぁでぁ。ん前ぁ風邪引だあんでねぁが? そんだごど知らねぁでぁ。ん前ぁの勘違いンだあんでねぁが? 早えぁぐすれでぁ!俺らあど行ぐや?
―今日の学習―
①形容詞語幹の作り方
形容詞を活用させるには語幹を知ることが必要。秋田弁の形容詞語幹は、原則として、標準語の形容詞終止形から規則的に造りだすことが可能。
a.標準語で、語末の母音が「-あい」の形容詞→「-えぁ」になる。
例:甘[あま]い→甘[あ]めぁ 暗[くら]い→暗[く]れぁ
b.標準語で、語末の母音が「-いい」の形容詞→「-い」になる。
例:嬉しい→嬉し 寂しい→寂し 苦しい→苦し
c.標準語で、語末の母音が「-うい」の形容詞→「-い」になる。
例:薄[うす]い→薄[う]し 温[ぬる]い→温[ぬ]り
d.標準語で、語末の母音が「-おい」の形容詞→「-え」になる。
例:黒[くろ]い→黒[く]れ くどい→くンで
②形容動詞の活用
標準語 |
標準語ルール |
秋田弁 |
秋田弁ルール |
|
語幹 |
静か |
静が |
||
連用形1 |
静かに |
語幹+に |
静がに |
語幹+に |
連用形2 |
静かで |
語幹+で |
静がンで |
語幹+(ン)で |
連用形3 |
静かだっ |
語幹+だっ |
静がンであっ |
語幹+(ン)であっ |
終止形 |
静かだ |
語幹+だ |
静がンだ |
語幹+(ン)だ |
連体形 |
静かな |
語幹+な |
静がンだ |
語幹+(ン)だ |
仮定形 |
静かなら |
語幹+なら |
静がンだら |
語幹+(ン)だら |
注意:仮定形は、後ろに仮定の「ば」をつける際には必ず「語幹+(ン)だば」という形となる。例:静がンだら→「ば」をつけると?→静がンだば
例文:静がに眠る。静かに眠る。綺麗に並べる。綺麗に並べる。こごンだば静がンでねぁ。ここは静かではない。こごンだば景色は綺麗ンで人も親切ンで大した良どごンだ。ここは景色は綺麗で人も親切でとてもいいところだ。昔ンだば夜ってばたいした静がンであったものンだ。昔は夜になればとても静かだったものだよ。親切ンであった人も、年行げば怒りっぽぐなるらしな。親切だった人も、年をとれば怒りっぽくなるらしいな。あの人ンだばたいした親切ンだ。あの人はとても親切だ。最近もの静がンだ女子[おなこ゚]あまり見ねぁぐなった。最近はもの静かな女性をあまり見なくなった。親切ンだ人さ会えば嬉しなー。親切な人に会えば嬉しいなぁ。俺ももー少し顔っこ綺麗ンだらもでであったべたってな。私ももう少し顔が綺麗ならもてていただろうけどな。こごももー少し静がンだばいあじな。ここももう少し静かならばいいのにな。
③形式名詞・準体助詞「あじ」
a.形式名詞「あじ」…「~なやつ」「~するやつ」など、用言や指示形容詞に修飾される形で使われる「やつ」の意味を表す。
b.準体助詞「あじ」…「そんなの知らない」「怒るのも当たり前だ」の「の」に当たる表現として使われる。
例文:あんだあじどご相手[あで]するな。あんな奴を相手にするな。人どご悪りぐ言うあじンだば嫌いンだ。人を悪く言うやつは嫌いだ。そんだあじ知らねぁ。そんなの知らない。 怒るあじも当だり前ぁンだ。怒るのも当たり前だ。
④準体助詞「な」
a.③の「あじ」のbと同じ用法。「の」に当たる言葉。
例文:そんだな知らねぁ。そんなの知らない。怒るなも当だり前ぁンだ。怒るのも当たり前だ。俺ら暑っちな苦手ンだ。私は暑いのが苦手だ。
b.所有物の省略「これは私のだ。」の「の」には、「のな」と言う。
例文:これ誰のなンだ?これは誰のだ?それ俺のなンだ。それは私のだ。せばあのかばんだば誰のなンだあんだ?じゃああのかばんは誰のなんだ?あれンだばん前ぁのなンだべせぁ。あれはお前のだろうが。
終わりに
以上で今回の会話篇は終了。
ではまたこんど。へばな。
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