第11課:助動詞「えんだ」「みでぁんだ」「べ」及び意志を表す終止形
みなさん、こんばんは。
今回は、タイトルの通り、「えんだ」「みでぁんだ」「べ」と意志を表す終止形について学びます。
ざっと説明しますと、「えんだ」=「ようだ」、「みでぁんだ」=「みたいだ」、「べ」=「だろう」です。意志を表す終止形とは、「~しよう」の意味を表す終止形のこと。
ともあれ詳しいことは講座にて。ではどうぞ。
本文:
太郎:あー、今日も雨げぁ…このこ゚ろ梅雨みでぁに雨降りの日余計ぁンだごど。明日ンだば晴れるべが?
太郎:ああ、今日も雨かい…このごろ梅雨のように雨降りの日が多いなぁ。明日は晴れるかな?
花子:明日も雨降るえんだや?天気予報ンで雨降りのマーグ付でだもの。
花子:明日も雨が降るようよ?天気予報で雨降りのマークがついていたもの。
太郎:おや、んだってげぁ?はー、…これンで雨降りの日何日続だべ?
太郎:おや、そうなのかい?はー、…これで雨降りの日が何日続いただろう?
花子:今日ンで丁度一週間なるな。明日本当に雨降りンだえんだば、八日連続でごどなるえんだ。
花子:今日で丁度一週間になるわね。明日本当に雨降りなようなら、八日連続ということになるようよ。
太郎:はー、梅雨ンでもねぁあじ、なしてこー梅雨みでぁんだじめじめした日続ぐって。こー雨降りばりンだば、やめぁなってくるでぁ。
太郎:はー、梅雨でもないのに、どうしてこう梅雨みたいなじめじめした日が続くんだ。こう雨降りばかりだと、憂鬱になってくるよ。
花子:えー。本当にんだな。…よし、せば童心に返って、明日お天気になるえに、てるてる坊主ンでもこしぇぁでみるが。
花子:ええ。本当にそうね。…よし、じゃあ童心に返って、明日お天気になるように、てるてる坊主でもこしらえてみようか。
太郎:てるてる坊主って…ん前ぁまだ時代錯誤ンだごど言ー出すねぁがは。そんだあじ作ったたって天気ンだば変わらねぁでぁ。
太郎:てるてる坊主って…君もまた時代錯誤なことを言い出すじゃないか。そんなの作ったところで天気は変わらないよ。
花子:えー、まずな。今ンだば天気予報もおが当だるえなって来たものな。んだンども、呪[まじな]いもそー悪りものンでねぁや?気休めぐれぁにンだばなるものは。
花子:ええ、まぁね。今は天気予報もすごく当たるようになって来たものね。けど、まじないもそう悪いものではないわよ?気休めぐらいにはなるもの。
太郎:うん、まずな。…よし。せば、んだな、ん前ぁの言う通り、童心に返って久しぶりにてるてる坊主ンでも作ってみるが。
太郎:うん、まぁね。…よし。じゃあ、そうだな。君の言う通り、童心に返って久しぶりにてるてる坊主でも作ってみようか。
花子:うん。作るべ作るべ。紙っこンだばこさ置だがら、こっから持ってげ。
花子:うん。作ろう作ろう。紙ならここに置いたから、ここから持って行って。
太郎:…花子、ん前ぁ、たんだにてるてる坊主作りでぁがったンだげンだべ…。
太郎:…花子、君、ただてるてる坊主が作りたかっただけだろう…。
語釈:
語釈:
① 余計ぁンだ:多い。例文:こごの店人余計ぁンで息苦し。 ご飯これンだば余計ぁンだ。
② (ン)だば:は。例文:俺ンだば大丈夫ンだがら心配ぁするな。 犬ンだば従順でめんけな。
③ や?:よ?例文:ん前ぁも早えぁぐやれや? ん前ぁももーちょっと頑張れや?
④ な:ね。例文:あれもながなが頑固ンだな。 今日寒びな。 せば留守番頼むな?
⑤ でごど:ということ。「で+名詞」は、「っていう+名詞」の省略。例文:せば俺らがだ悪りでごどなるべせぁ。 人誘ってるあじ、んた[=嫌だ]でごどねぁべせぁ。 伊藤さんで人、ん前ぁどご訪ねできてあったや?
⑥ ごど:こと。例文:そんだごどンで泣ぐごどねぁべ? 俺ら見だごどねぁ。
⑦ ごどなる:ことになる。「になる」の「に」は、(「に」と「なる」の間に「(ン)だば」など他の言葉が入らない場合は、)よく省略される。例文:あの人よぐ笑うえなった。 ながなが綺麗ならねぁごど。 あの人も大人なったな。
⑧ あじ:のに。ものを。例文:せっかぐん前ぁのために拵[こし]ぇぁでけだあじ。
⑨ なして~って:どうして~というのか。例文:なして知らねぁって?めぁのごどンだべ? なして駄目ンだって?別に良ねぁがは。
⑩ ばり:ばかり。例文:文句ばりつでなんとなるって? 俺さばり言うなでぁ。
⑪ やめぁなる:(精神的に)病[やまい]になる。憂鬱になる。気が滅入る。例文:こー雨降りの日続げばやめぁなってくるでぁ。 ん前ぁまだそんだ勝手だごどして…本当にやめぁなるな。
⑫ こしぇぁる[拵]:こしらえる。作る。例文:ご飯拵[こし]ぇぁでおでけれ。 なんと、ん前ぁまだ正月ンだあじ、餅もこしぇぁねぁってげぁ?本当に困った嫁ンだごど。
⑬ は:勢いを強める。意味はない。例文:今日寒びなは。 めぁも食うがは?
⑭ でぁ:(尻下がりの)よ。例文:少し喋れでぁ。 これンだばそー簡単に行がねぁでぁ。
⑮ まずな:まぁね。軽い肯定。例文:そんだごどされれば誰ンだって腹立づべせぁ。―んー。まずな。んだンども相手上司ンだもの。そー感情的になるわげにも行がねぁねぁ?
⑯ ぐれぁ:くらい。例文:自転車ぐれぁ乗れれでぁ。 俺ぐれぁの歳なればめぁも分がるえなるあんだって。
⑰ っこ:特に意味はない。小さいものと愛着あるものに使う傾向がある。例文:ほら、こさ虫っこいだ。 鼠っこどだどだど玄関馳せであってだ。 茶碗っこ持って来てけれ。 ラップっこ巻でおでけれ。 蠅叩きっこそンでねぁがった?
⑱ こっから:ここから。「こごがら」の変化。同じように、「そごがら」「どごがら」は「そっから」「どっから」とも言う。例文:めぁどっから来た? 太郎、そっからティッシュ取ってけれ。 こっからあっこまンでンだば遠ぎぐねぁが?
⑲ たんだに~:ただ~。例文:たんだに寝でばりいでなんとして暮らして行ぐって? たんだに勉強ばりしたたって駄目ンだ。
―今日の学習―
①推量の助動詞「ようだ」
標準語 |
秋田弁 |
例文: |
|
連用形1 |
ように |
えに |
怪我さねぁえに気つけれ。怪我をしないように気をつけろ。 |
連用形2 |
ようで |
えんで |
分かってるえんで分がらねぁものンだ。 分かっているようでわからないもんさ。 |
連用形3 |
ようだっ |
えんであっ |
怒ってるえんであった。怒っているようだった。 |
終止形 |
ようだ |
えんだ |
明日雨降るえんだ。明日雨が降るようだ。 |
連体形 |
ような |
えんだ |
怒ったえんだ顔してあった。怒っているような顔をしていた。 |
仮定形 |
ようなら |
えんだら |
来るえんだら連絡けれな?来るようなら連絡を頂戴ね? |
注意:仮定形の直後に仮定「ば」を付ける場合は、「えんだば」となる。「えんだらば」とは絶対に言わない。
例:来るえんだば連絡けれな?来るようならば連絡を頂戴ね?
②推量の助動詞「みたいだ」
標準語 |
秋田弁 |
例文: |
|
連用形1 |
みたいに |
みでぁに |
山みでぁに大っき。山みたいに大きい。 |
連用形2 |
みたいで |
みでぁんで |
馬鹿みでぁんでしょし。馬鹿みたいで恥ずかしい。 |
連用形3 |
みたいだっ |
みでぁんであっ |
縮ごまって亀みでぁんであった。縮こまって亀みたいだった。 |
終止形 |
みたいだ |
みでぁんだ |
顔真っ赤ンで鬼みでぁんだ。顔が真っ赤で鬼みたいだ。 |
連体形 |
みたいな |
みでぁんだ |
外人みでぁんだ顔してだ。外人みたいな顔をしている。 |
仮定形 |
みたいなら |
みでぁんだら |
思いつかないので割愛。 |
注意:仮定形は、直後に「ば」を付ける場合は、「みでぁんだば」と言うこと。「みでぁんだらば」とは絶対に言わない。まぁ「みでぁんだ」は仮定形を使う機会はないと思うが。
③推量・勧誘の助動詞「べ」
a.「用言終止形+べ」…推量「~[終止形]だろう」の意味を表す。
例文:あれ太郎ンだべ?あれ太郎だろう?明日ンだば雨降るべ。明日は雨が降るだろう。 東北ンだば冬寒びべ。東北は冬が寒いだろう。
b.「用言終止形+べ」…勧誘・方針の決定「~[動詞未然形]う/よう」の意。
例文:一緒に行ぐべ。一緒に行こう。子供さやらせるべ。子供にやらせよう。せばそーするべ。じゃあそうしよう。まだ一緒に来るべ。また一緒に来よう。
④意志を表す終止形
秋田弁では、意志「~よう」を表す際には、動詞の終止形を使う。この場合、基本的に後ろに「が」「がな」「ど思っ」「どって」「どし」と続く。
例文:まず、やってみるが。まぁ、やってみようか。俺も行ぐがな。私も行こうかな。今やるど思ったのに。今やろうと思ったのに。行ぐどしたンども、客来て行がれねぁがった。行こうとしたけど、客が来て行かれなかった。なんとが合格するどって、一所懸命なって勉強したものンだ。なんとか合格しようと、一所懸命になって勉強したものさ。
終い
以上で今回の勉強はおわり。
ではまた。へばな。
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