秋田方言・秋田弁発音講座

第10課:文の発音

秋田方言・秋田弁発音講座第10課:文の発音

 みなさん、こんにちは。

 

 今回は、文の発音について勉強します。

 

 今回学ぶ内容は、『秋田方言』には書かれていない内容です。私が日常の秋田弁を聞きながら補足したものとお考えください。

問題提起

 さて、これまでの秋田弁の発音の学習は、文字の発音とか、単語レベルでの発音についてのものがメインでした。

 

 ですが、言葉と言うのは単なる単語の羅列というわけでも無し。単語レベルの発音は分かったが、文のレベルになった際には、発音をどうしたらよいのか。

 

 例えば「私は学校に行きたい」という標準語の文があります。これを一つずつ秋田弁との対応関係をもとに翻訳しますと…

①「私」―「おれ」
②「は」―「省略」又は「だンば」
③「学校」―「がっこー」
④「に」―「に」
⑤「行き」―「行ぎ」
⑥「たい」―「てぁ」

 

 …なので、単純に単語動詞をそのままくっつけまっすと、「おれ (だンば) がっこー に 行ぎ てぁ」で「おれ(だンば)がっこーに行ぎてぁ」となりますね。

 

 で、ここでなにが問題になるかというと、「文は単に単語を組み合わせただけの発音で正しくなるのか」という点。これでちゃんとした秋田弁になっているのでしょうか。

 

 結論を申します。答えはNO[ノー]!駄目です。アクセントとかイントネーションとか、まぁそういう問題もありますが、それらは実物聞かなきゃ分からないレベルなのでまぁ無視するとしましょう。

 

 問題は、それらを無視したとしてもまだ駄目だというところ。つまり、「活字で表せる範囲に限定してもアウト」。なにが問題かというとですね、ええ、実は今の文、実際の発音通りに活字に直すと以下のような表記でなければなりません。今の文と見比べてみてください。

 

今の文:「おれ(だンば)がっこーに行ぎてぁ」
正しい文:「おれ(ンだンば)がっこーンに行ぎでぁ」

 

 違い、分かりますかね。「おれ(だンば)」が「おれ(ンだンば)」になり、「がっこーに」が「がっこーンに」になり、「行ぎてぁ」が「行ぎでぁ」になってます。つまり「れ」が「れ(ン)」に、「こー」が「こーン」と鼻母音に、「てぁ」が「でぁ」と濁音になったわけです。

 

 この辺のルールがどうなっているのか、それがここでの学習項目となります。

結論

結論:秋田弁文では、「助詞」「助動詞」は前の語に接続し、一体化して一語化する。

 

 いきなり結論を書いてしまいましたが、まぁこれにつきます。

 

 つまりですね、本来言葉というのは、一つの単語で一語なのですが、文中においては「助詞」と「助動詞」は単語数に数えないんです、秋田弁の発音規則的には。

 

 …とまぁ、言葉だけ並べても仕方ありませんね。

 

 とりあえず、標準語の文で、一語化する部分ごとに区切れるように練習しましょうか。千里の道も一歩から。なにごとも順々にやりましょう。

 

 なお、ここの話は、前知識として、なにが助詞でなにが助動詞なのかを理解しなければ難しいので、分からない方は文法解説を見るなりしていただければ幸いです。

 

 ちなみに助詞とは、格助詞・副助詞・接続助詞・終助詞・間投助詞等等、「助詞」という言葉のつく品詞すべての総称です。

一語化の練習

例1:「私は学校に行きたい。」→一語化するところまで「/」を入れるとすると?
解答:「私は/学校に/行きたい。」

 

①私は:名詞「私」+助詞「は」→「私は」で一語化。

 

②学校に:名詞「学校」+助詞「に」→「学校に」で一語化。

 

③行きたい:動詞連用形「行き」+助動詞「たい」→「行きたい」で一語化。

 

例2:「昨日も彼は私の家にも来てくれたようだ」→一語化するところまでで「/」を入れると?

解答:「昨日も/彼は/私の/家にも/来て/くれたようだ」

①昨日も:名詞「昨日」+助詞「も」→「昨日も」で一語化。

 

②彼は:名詞「彼」+助詞「は」→「彼は」で一語化。

 

③私の:名詞「私」+助詞「の」→「私の」で一語化。

 

④家にも:名詞「家」+助詞「に」+助詞「も」→「家にも」で一語化(注1)。

 

⑤来て:動詞連用形「来[き]」+助詞「て」→「来て」で一語化。

 

⑥くれたようだ:動詞連用形「くれ」+助動詞「た」+助動詞「ようだ」→「くれたようだ」で一語化(注2)。

 

注1

これは「に」「も」と、助詞が二つありますね。このように助詞が複数あっても、規則は変わりません。「助詞は前の語につく。」だからこの場合、助詞「に」は「家」にくっついて「家に」という語に。更に助詞「も」がありますから「家に」+「も」で「家にも」ですね。
なので例えば、「お前には」なら、名詞「お前」、助詞「に」、助詞「は」なので、「お前+に+は」で「お前には」の3つで一語化します。まぁとにかくひたすら直前の語にくっつければいいんですよ、助詞を見かけたら。

 

注2:

こちらは「た」「ようだ」と、助動詞が二つくっついている例ですね。このように、助動詞が複数ある場合も規則は変わりません。「助動詞は前の語にくっつく。」なので、「くれ」「+た」「+ようだ」で「くれたようだ」で一語化です。
一応他の例も挙げておきますと、例えば「書かせられた」なら、動詞「書か」、助動詞「せ」、助動詞「られ」、助動詞「た」なので、「書か」「+せ」「+られ」+「た」」の四つで一語化して「書かせられた」です。「助動詞を見かけたらひたすら前の語にくっつけ続ける。」まぁ助詞の時と同じですね。

 

 では最後に問題。次の文はどこまでで一語化するでしょうか。

 

問題:標準語文「私のことならば気にはしなくてもよかったのにな。」に、一語化した部分の直後に区切りの「/」マークを入れてみましょう。

 

 どうですか。どこまでか分かりましたか?

 

 ともあれ答え合わせです。

 

解答:「私の/ことならば/気には/しなくても/よかったのにな。」

 

詳解:

①私の:名詞「私」+助詞「の」→「私の」で一語化。

 

②ことならば:名詞「こと」+助動詞「なら」+助詞「ば」→「ことならば」で一語化。

 

③気には:名詞「気」+助詞「に」+助詞「は」→「気には」で一語化。

 

④しなくても:動詞「し」+助動詞「なく」+助詞「て」+助詞「も」→「しなくても」で一語化。

 

⑤よかったのにな:形容詞「よかっ」+助動詞「た」+助詞「のに」+助詞「な」→「よかったのにな」の4つで一語化(注)。

 

これは、「た」「のに」「な」と、助動詞と助詞とが両方ある場合ですね。こういう場合も原則通りやればいいですよ。「助詞は前の語にくっつける」「助動詞は前の語にくっつける」だから、「よかっ」「+た」「+のに」「+な」の四つがくっつき、「よかったのにな」で一語化。
練習のために他の例も出しますか。例えば「行きたかったなぁ」なら、動詞「行き」、助動詞「たかっ」、助動詞「た」、助詞「なぁ」なので、「行き」「+たかっ」「+た」「+なぁ」の四つがドッキングし、「行きたかったなぁ」で一語化です。慣れればなんのこともないでしょう。

 

 いかがでしたか?ちゃんと理解できましたでしょうか。要するに原則通りですよ。どこまでも助詞を見つけたら前の語にくっつけてドッキング、助動詞見つけてもドッキング。これ繰り返してれば勝手に正解にたどり着きます。

秋田弁文で一語化

 さて、標準語で練習したので今度は秋田弁での練習行きます。

 

 先にも申しました通り、助詞や助動詞は前の語とくっついて一語化します。これは地味にめんどうなことです。

 

 なぜなら、秋田弁の場合、一語化した部分ごとに「無声母音化」「鼻母音化」「濁音化」規則を当てはめていかなければならないのですから。

 

 あっ、「無声母音・鼻母音・濁音の規則を当てはめる」というのは、一語化した部分全体ではなく、「助詞・助動詞の語頭部分」だけです。

 

 例えば、「行ぎ-てぁぐ-ねぁがっ-た」なら、助動詞の語頭部分は「でぁ」「ねぁ」「た」ですね。この語頭部分に、標準語-秋田弁間の濁音化の規則を当てはめたり、秋田弁の鼻母音化・無声母音化の規則を当てはめたりしろってことです。

 

 今の例なら、「行ぎ-てぁ」の「てぁ」の音はタ行音なので、濁音化規則により第二音節以下にて濁音化。故に「行ぎでぁ」に濁る。「てぁぐ」の「ぐ」は語頭じゃないので発音は不変。

 

 また「行ぎでぁぐ-ねぁがっ」の「ねぁ」も助動詞語頭部分。なので鼻母音化規則により、前の語を鼻母音化させて「行ぎでぁぐンねぁがっ」になる。「ねぁがっ」の「がっ」は語頭部分じゃないので発音は不変。

 

 あた「行ぎでぁぐねぁがっ-た」の「た」も助動詞語頭部分なので、発音規則を適用。「タ行」は促音「ッ」の直後にあっては清音タ行のままなので、「行ぎでぁぐねぁがった」のまま。

 

 故に、「行ぎ-てぁぐ-ねぁがっ-た」の発音は、「行ぎでぁぐンねぁがった」となる。…とまぁ、やり方はこんな感じですね。

 

 まぁこの手の面倒な規則は、ひたすら練習と解説あるのみですね。以下、同じ要領で秋田弁文の発音を書いていきます。

秋田弁文発音規則練習

例題1:次の秋田弁単語の羅列「俺/に/も/会う/に/来/て/け/た」を、繋げて正しい秋田弁文の発音に直してみましょう。

 

 

 

 

解答:「俺[おれ]ンにンも会[あ]うンに来[き]てけだ。」

 

詳解:

①おれンにンも:名詞「おれ」+助詞「に」+助詞「も」で一語化。なので「おれにも」を一単語として見て、鼻母音化の規則を当てはめると、「おれンにンも」ですね。

 

②あうンに:動詞「会う」+助詞「に」で一語化。なので「会うに」に鼻母音化の規則を当てはめると、「会うンに」ですね。

 

③きて:動詞連用形「来[き]」+助詞「て」で一語化。なので「きて」に無声母音化の規則を当てはめて「きて」ですね。

 

④けだ:動詞連用形「け」+助動詞「た」で一語化。なので「けた」に濁音化規則を当てはめて、「けだ」ですね。第二音節以下のタ行はダ行音になる、の原則を思い出しましょう。

 

例題2:次の秋田弁単語の羅列「昨日/だンば/ん前ぁ/も/忙しがっ/た/べ/どンも/せぁ、/毎日/そー/働い/て/ばり/いる/わげ/で/だンば/ねぁ/なンだ/べ?」を、繋げて正しい秋田弁文の発音に直してみましょう。

 

 

 

 

解答:「昨日[きンのー]ンだンばん前[め]ぁンも忙[いそが]しがったンべンどンもせぁ、毎日[まいンにぢ]そー働[はだらい]でンばりいるわげンでンだンばンねぁンなンだンべ?」

 

詳解:

①きンのーンだンば:名詞「きンのー」+助動詞「だ」+助詞「ば」で一語化。なので「きンのーだば」を一語とみなし、鼻母音の発現規則を適用して、「きンのーンだンば」となります。

 

②んめぁンも:名詞「んめぁ」+助詞「も」で一語。「んめぁも」を一語として規則を適応すると「んめぁンも」ですね。

 

③いそがしがったンべンどンもせぁ:形容詞「いそがしがっ」+助動詞「た」+助動詞「べ」+助詞「どンも」+助詞「せぁ」で一語化だから、「いそがしがったべどンもせぁ」に発音規則を適用。すると「いそがしがったンべンどンもせぁ」ですね。「っ+タ行」→促音の直後のタ行は清音のまま→「った」、「音節+バ行」→濁音の前の音節は鼻母音化→「たンべ」、「音節+ダ行」→濁音の前の音節は鼻母音化→「べンどンも」、という具合です。

 

④まいンにぢ:名詞「まいンにぢ」。助詞でも助動詞でもないので、そのままで一語。

 

⑤そー:副詞「そー」。④と同じ理由でそのまま。

 

⑥はだらいでンばり:動詞「はだらい」+助詞「て」+助詞「ばり」だから、「はだらいてばり」で一語。これを一語として発音規則を適用すると、「て」にタ行の濁音化、更に「て」に鼻音化規則適用により、「はだらいでンばり」となります。

 

⑦いる:動詞。助詞でも助動詞でもないのでそのまま。

 

⑧わげンでンだンばンねぁンなンだンべ:名詞「わげ」+助動詞「で」+助詞「だンば」+助動詞「ねぁ」+助動詞「なンだ」+助動詞「べ」だから、「わげでだンばねぁなンだべ」を一語として発音規則を適用。鼻音化規則により「わげンでンだンばンねぁンなンだンべ」となりますね

 

※~でもねぁ・でだばねぁ

 この「ねぁ」は助動詞ですので、本来なら単独では使えないはずなのですが、感覚的には「知らねぁわげでもよ、ねぁべがらよ」「美人でだばせぁ、ねぁがったどもせぁ」みたいに、「でも」「でだば」で一応区切ることができますね。

 

 なので、この表現に関しては、例外的に「~でンも/~でンだンば」で一区切り、「ねぁ~」で一区切りとしてもよいかと思います。但し、その時は「、」とか、少しポーズを置くことになりますが。

 

 じゃあ最後に問題。以下の秋田弁の単語をつなぎ合わせて、正しい秋田弁の発音となるように正してみましょう。

 

 但し、下の語彙のうち、「がら」「どさ」は、例外語彙で、いかなる発音変化もしませんのでそのままにしておいてください。

 

語彙

「おれ」「だンば」「昔」「がら」「こんた」「ごど」「ばり」「し」「て」「あっ」「た」「どンも」「せぁ」「、」「んだンどンも」「一回」「も」「人」「どさ」「迷惑」「かげ」「た」「ごど」「だンば」「ねぁ」「なンだ」「や」「は」「。」

 

 無駄に長いですが、まぁそんなに難しむもありません。答え合わせをしましょう。

 

解答:「おれンだンば昔[むがし]がらこんたごどンばりしてあったンどンもせぁ、一回ンも人どさ迷惑かげだごどンだンばンねぁンなンだやは。」

 

詳解:

①「おれンだンば」:「おれ」は名詞、「だンば」は助詞。これをつなげて発音規則を適用。

 

②「昔[むがし]がら」:「昔」は名詞、「がら」は助詞。「がら」は例外的に発音不変。そのまま繋ぐ。

 

③「こんた」:指示形容詞。助詞でも助動詞でもないのでそのまま。

 

④「ごどンばり」:名詞「ごど」+助詞「ばり」。つなげて規則適用。

 

⑤「して」:動詞「し」+助詞「て」。つなげて規則適用。以下「つなげて適用」省略。

 

⑥「あったンどンもせぁ、」:動詞「あっ」+助動詞「た」+助詞「どンも」+助詞「せぁ」。

 

⑦「一回ンも」:名詞「一回」+助詞「も」

 

⑧「人どさ」:名詞「人」+助詞「どさ」。この「どさ」は例外語彙。常に「どさ」で、前の語を鼻母音化させることはない。

 

⑨「迷惑」:名詞「迷惑」のみ。助詞助動詞でないのでそのまま。

 

⑩「かげだ」:動詞「かげ」+助動詞「た」。

 

⑪「ごどンだンばンねぁンなンだやは。」:名詞「ごど」+助動詞「だ」+助詞「ば」+助動詞「ねぁ」+助動詞「なンだ」+助詞「や」+助詞「は」。

 

 いかがですか?ふふふ、地獄を見るでしょう?面倒くささもさることながら、主に鼻母音記号のあまりの多さに。

 

 まぁ当サイトで、この発音講座以外で原則鼻母音と無声母音を表記しないのはそんな事情です。規則覚えりゃ表記しなくてもいーんすよこんなもん。

 

 ただ、ダ行による鼻母音化に関してだけは、できれば表記した方がいいと考えています。第9課で述べましたように、ダ行だけは秋田弁のダ行だけ見ても、鼻母音に読むか純母音に読むかの判断ができませんので。

文の発音規則の例外:発音の変わらない語彙

 なお、以上のことは原則です。助詞の中には、例外的に一語化しても発音変化のしないものもあります。これらは、そんなに量は多くないので、そのまま覚えてしまってもよいかと思います。

 

 とりあえず、下にそういう語彙の特徴と一覧についてまとめておきたいと思います。

 

a.発音の変わらない助詞の特徴:
原則:語源的に、標準語語彙において、「カ行」「タ行」の清音で始まっていたものが、秋田弁語彙となって「ガ行」「ダ行」となったものは、総じて発音の変化を起こすことはありません。

 

発音変化しない秋田弁語彙(右)ともとになった標準語語彙(左)

例:やつ→あじ か→が かい→げぁ から→がら くらい→ぐれぁ こそ→ごそ・ごす・ごすか と→ど とか→どが とさ→ど ところ→どご ところへ→どさ ところから→どっから ところで→どごろンで といって→どって

 

 まぁ特徴は以上です。「がん」「がな」「ても」「たって」「だどって」「とごろンか゚」「でぁ」強意の「ど」辺りは、そういう特徴には当てはまりませんね。この辺は黙って覚える他ないですね。

 

b.発音の変わらない助詞一覧:
(近代秋田方言の間投助詞については、発音とかよく分からんので省きます。)

 

①ガ行で始まる助詞→カ゚行には変化しない。

○:今がらやる ×:今ンか゚らやる
○:おン前ぁンも来るが ×:おン前ぁンも来るンか゚
○:今ごそ頑張るンべ ×:今こ゚そ頑張るンべ

説明:つまり、前の語にくっついた時に、ガ行→カ゚行の変化まではしないということです。

該当助詞:格助詞「がら」「がンな」「がん」、副助詞「ぐれぁ」「ごそ」「ごす」「ごすか」「が」、接続助詞「がら」、終助詞「が」「げぁ」

 

②「ど」で始まる助詞(接続助詞「どンも」だけ除く)→直前の音を鼻母音化しない。

○:人どご笑う ×:人ンどご笑う
○:人どさやる ×:人ンどさやる
○:人どっからもらう ×:人ンどっからもらう
○:これどこれあれンばい。 ×:これンどこれあれンばい。
○:おン前ぁど結婚してぁ ×:おン前ぁンど結婚してぁ
○:あれンも分がらンねぁど。 ×:あれンも分がらンねぁど。
○:少しうるせぁど。 ×:少しうるせぁンど。
○:あれどがこれどが欲し ×:あれンどがこれンどが欲し

該当語彙:格助詞「どご」「どさ」「どっから」「ど」「どって」、副助詞「どって」、接続助詞「ど」「どごろンで」、終助詞「ど」(伝聞・強意どちらも)。

 

③格助詞「あじ」・接続助詞「あじ」

○:水とンめるあじ忘れだ。 ×:水とンめるあンじ忘れだ。
○:今来たあじ、直ンく゚帰った。 ×:今来たあンじ、直ンく゚帰った。

 

④格助詞の、引用の「だどって」

○:「俺も行ぎでぁー」だどって… ×:「俺も行ぎでぁー」ンだどって

 

⑤接続助詞「終止形+ても」「終止形+たって」「とごろンか゚」

○:雨ぁ降るても ×:雨ぁ降るでも
○:雨降るたって ×:雨降るたって
○:行ったとごろンか゚間に合わンねぁ ×:行ったどンこ゚ろンか゚間に合わンねぁ

説明:つまり、清音のまま変わらないやつですね。

 

⑥終助詞「とンな」

○:今日ぁ雨ンだとンな  ×:今日ぁ雨ンだどンな

説明:これまた清音のまま変わらないやつです。「とな」は近代の言い方ですね。

 

⑦終助詞「でぁ」

○:今行ぐでぁ  ×:今行ぐンでぁ

 

 意外と多いなーと思う人もいそうですね。ってか実際多いですし。まぁ一語化した時の発音変化については、ここで一気に覚えてしまってもよいですし、ここの助詞・助動詞を覚えるときに一つ一つ覚えるというのも手です。

 

 といっても、現在当サイトの文法解説は、鼻母音や無声母音を排した説明になっているので、この辺の説明は一切なされていないわけですが。まったく、どうしたものやら。

おわりに

 ともあれ、今回の勉強はここまでです。

 

 いやはや、みなさまおつかれさまでございました。

 

 いかがでしたでしょう?やはり厄介な印象を受けましたかね?

 

 しかしですね、今回の学習内容は、難しいようでいて、実はそんなに難しくはありません。

 

 今回の学習項目は、突き詰めて考えればただ二つなのです。

 

 1つ、文における「ひとまとまり」がどこまでなのかを知ること。2つ、その「ひとまとまり」の発音をどうするかを知ること。

 

 前者は「助詞・助動詞の場合のみ前の単語にくっつけてひとまとまりとする」という規則ですし、後者は「助詞・助動詞の語頭部分のみ、新たに濁音化・無声母音化・鼻母音化の規則を当てはめる」という規則です。

 

 言葉で書き表せばこそ長々しく煩わしい印象を受けますが、やっていること自体は別段難しいものではないのです。

 

 強いて厄介な点を挙げるとすれば、濁音化の規則を当てはめる点くらいなものです。

 

 本来カ行・タ行が濁音になるというこの濁音化の規則というのは、標準語と秋田弁間の語彙の対応関係を説明するためにあるものなのですが、それがここに来て秋田弁語彙内でも活用されるハメになるのですからね。そこだけ少々戸惑うかもしれません。

 

 まぁ、今回の課は今まで勉強した内容の他、なにが助詞でなにが助動詞なのかも覚えていなければなかなか覚えられない、いわば総合的な知識を必要とする課でありますので、今読んで分からなかったという人は、文法的な知識等も深まった後で読んでみてください。

 

 そうすれば、今理解できなかった部分も、次には理解できるようになっているかもしれませんので。

 

 ともあれ、今回はこの辺で。へばなー。

 

 

 

 

関連ページ

第1課:母音
このページでは、秋田弁の母音について勉強していきます。
第2課:無声母音
このページでは、『秋田方言』の音韻篇を参考に、秋田弁の発音について勉強していきます。
第3課:鼻母音
このページでは、『秋田方言』の音韻篇を参考に、秋田弁の発音について勉強していきます。
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このページでは、『秋田方言』の音韻篇を参考に、秋田弁の発音について勉強していきます。
第5課:子音②「サ行音」
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このページでは、『秋田方言』の音韻篇を参考に、秋田弁の発音について勉強していきます。
第7課:子音③「その他」
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追記1:鼻母音の発音方法
このページでは、『秋田方言』の音韻篇を参考に、秋田弁の発音について勉強していきます。
第8課:長音・促音・撥音
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第9課:その他取りこぼし。
このページでは、『秋田方言』の音韻篇を参考に、秋田弁の発音について勉強していきます。
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最終課:秋田方言文字表記法
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