秋田方言・秋田弁発音講座

第6課:子音③タ行音

秋田方言・秋田弁発音講座第6課:子音③タ行音

 みなさん、こんにちは。

 

 今回は、秋田弁のタ行音について学びます。

1.標準語のタ行・ダ行

 まずは前知識として、標準語のタ行・ダ行について勉強しましょう。

 

 標準語のタ行音は、「たてと」の子音[t]と、「ち」の子音[ch]と、「つ」の子音[ts]の三つに分かれます。

 

 …ええ、実は標準語って、子音に関してはかなりいいかげんなんですよ。「たてと」と「ち」と「つ」の子音はすべて違うんです。

 

 まぁこの辺は口で説明するより実践した方が早いですね。一つ一つ確認していきましょう。

 

①「たてと」の子音[t]の確認
 まずは「たてと」の子音から。みなさん、「たった」と言うつもりで「たっ」の部分で舌を止めましょう。そして「っ」の状態から、「あ」「い」「う」「え」「お」を入れていきます。

 

 するとでしょう?「たった」「たってぃ」「たっとぅ」「たって」「たっと」となりませんでしたか?「てぃ」は英語のfifteenの「teen」の「tee」の部分のような音。「とぅ」は英語のtooのような音ではなかったでしょうか?

 

 そう。それが本来のタ行音です。「たてぃとぅてと」の行音こそがタ行音=子音[t]なわけです。

 

②「ち」の子音[ch]の確認

 さてさてお次は「ち」の子音の確認です。みなさん、「ちっちゃい」と言うつもりで「ちっ」の部分で舌を止めましょう。

 

 その状態から母音「あいうえお」をつけると、「ちゃ」「ちぃ」「ちゅ」「ちぇ」「ちょ」となりますよね。

 

 そしてここで注目したいのは「ちぃ」の音。どうですか?普段使ってる「ち」の音そっくりではありませんか?それもそのはず。

 

 実は標準語の「ち」は、「ちゃちぃちゅちぇちょ」の「ちぃ」の音なのでしたー。標準語の「ち」は「チャ行音+い」。つまり「ち」の子音はチャ行音[ch]なのですよ。

 

③「つ」の子音[ts]の確認

 さて、最後は「つ」の子音です。これは一体、本来ならどの行の音だったのでしょうか。

 

 結論を書きます。標準語の「つ」は、実は「つぁつぃつぅつぇつぉ」の「つぅ」、すなわち「ツァ行音の子音[ts]+う[u]」だったのです。

 

 例のごとく、「おとっつぁん」と言うつもりで「おとっ」まで言って舌の位置を固定しましょう。そこに母音「あいうえお」を加えると、「つぁつぃつぅつぇつぉ」という音が出ます。

 

 そして注目は「つぅ」の発音。どうですか?「つぅ」の音。「つ」の音にそっくりではありませんか?それもそのはず。実は標準語の「つ」の音は「つぁつぃつぅつぇつぉ」の「つぅ」なのですから。

 

 標準語の「つ」は、ツァ行音[ts]+母音う。すなわち「つ」の子音は、ツァ行音[ts]なのでした。

 

 以上で、標準語の「たちつてと」の子音に関する勉強はおしまいです。

2.標準語のダ行音

 さてさてお次はダ行音です。

 

 タ行音のところで詳しくやったのであまり長々とは書きません。

 

 ずばり結論から。標準語のダ行音は「だぢづでど」ですが、このうち「だでど」が、タ行音を濁らせたダ行音[d]を子音に持つグループです。

 

 「ぢ」「づ」は、前回学んだ「じ」「ず」と同じ発音で読みます。なので「ぢ」は、語頭ならヂャ行イ段の「ぢぃ[zhi]」、語頭以外に位置する場合はジャ行イ段で「じぃ[ji]」の発音ですね。「づ」は、語頭ならヅァ行ウ段の「づぅ[dzu]」、語頭以外ならザ行ウ段の「ず[zu]」です。

3.標準語のタ行・ダ行まとめ

 複雑なのでちゃちゃっとまとめます。

 

 標準語のタ行・ダ行についてまとめるとこんな感じです

 

a.タ行

①たてと…タ行「たてぃとぅてと」の行音[t]+あえお で発音。
②ち…チャ行「ちゃちぃちゅちぇちょ」の行音[ch]+い で発音。
③つ…ツァ行「つぁつぃつぅつぇつぉ」の行音[ts]+う で発音。

 

b.ダ行

①だでど…ダ行「だでぃどぅでど」の行音[d]+あえお で発音。
②ぢ…前回学んだ「じ」と同じ発音。
③づ…前回学んだ「ず」と同じ発音。

4.秋田弁のタ行音の種類

 ささ、ようやくお待ちかね。秋田弁の発音の勉強に入りますよ。

 

 秋田弁のタ行音は、二つに分かれます。すなわち、タ行音と、ダ行音です。

 

 但し、秋田弁もタ行とダ行は少し複雑。「たててぁと」が「タ行音[t]+あええぁお」「だででぁど」が「ダ行音[d]+あええぁお」で発音されるのは、標準語と変わりありません(標準語には「てぁ」「でぁ」はないですが。)。

 

 問題は「ち」「つ」「ぢ」「づ」です。標準語でも別グループからやってきた奴らですね。秋田弁の場合はどうなのでしょうか。

 

 以下、それについて解説して参ります。

5.秋田弁の「つ」「づ」

 まずは簡単な方から。

 

 ズバリ秋田弁の「つ」「づ」。

 

 秋田弁の「つ」は、「ツァ行音[ts]+秋田弁の母音う」で発音され、「づ」は、「ヅァ行音[ds]+秋田弁の母音う」で発音されます。

 

 なのでまぁ、秋田弁でも「づ」と「ず」が同音になります秋田弁の場合は、「ず」「づ」どちらもヅァ音+秋田弁の母音うのdzuですよ。

6.秋田弁の「ち」「ぢ」

 さて、最後の問題は「ち」と「ぢ」ですね。標準語では、「ち」は「ちゃちぃちゅちぇちょ」の「ちぃ」の音、「ぢ」は「じゃじぃじゅじぇじょ」の「じぃ」の音と同音でした。

 

 秋田弁でも同じなのか?答えはNO[ノー]です。

 

 秋田弁では、「ち」の音は、「つぁつぃつぅつぇつぉ」の「つぃ」の音と同音です。つまり、秋田弁の「ち」=「ツァ行音[ts]+い」

 

 そして「ぢ」の音は、「づぁづぃづぅづぇづぉ」の「づぃ」の音と同音となります。つまり、秋田弁の「ぢ」=「ヅァ行音[dz]+い」なのです。これはまぁつまり、秋田弁の「ぢ」=秋田弁の「じ」というわけですね。

 

 えー、じゃあ秋田の人って外国語みたいな「つぃ」「づぃ」の発音を普段からしてるのー?って驚く方もあるかもしれませんね。

 

 でもね、標準語話者が秋田弁の「ち」「ぢ」を聞いても、「つぃ」「づぃ」と言ってるー、とは考えないと思いますよ。

 

 原因はこれまた秋田弁の曖昧な母音にあります。案ずるよりも生むが易し、ほら、みなさん、ツァ行音・ヅァ行音に秋田弁の母音「い」をつけて「つぃ」「づぃ」と発音してみてください。

 

 …どうですか?文字表記のような奇怪な音になりましたか?なりませんよね?秋田弁の母音と繋げれば、「つぃ」は、「ち」と「つ」の中間みたいな音に、「づぃ」は、「じ」と「づ」の中間みたいな音になりますよね?

 

 それこそが秋田弁の「ち」「ぢ」なのですよ。

7.標準語のタ行音と秋田弁のダ行音の対応関係

 さて、発音に関するめんどうな話を終えたところで、またまた面倒なお話です。

 

 すなわち、標準語語彙と秋田弁語彙の対応関係に関するもの。カ行-ガ行とガ行-カ゚行の対応関係でトラウマになっている人もいるかもしれませんね。

 

 標準語単語-秋田弁単語の間には、実は、カ行-ガ行とガ行-カ゚行の他に、「タ行-ダ行」の対応関係というのもあるのです。

 

 そのルールを示すと、以下のようになります。
(1)原則:標準語語彙で第二音節以降のタ行音(「ち」「つ」含む)は、対応する秋田弁語彙では、濁ってダ行音(「ぢ」「づ」含む)となります。

例:歌[う]→う う→う 立→た 宛→あ 後[あ]→あ 等々

 

(2)例外1:但し、標準語語彙で「っ+タ行音(「ち」・「つ」含む)」は、対応する秋田弁でも、濁らずそのまま「っ+タ行音(「ち」「つ」含む)」となります。

例:はっり→はっり びっり→びっり がっり→がっり 等々

説明:現代秋田弁の使用状況からの補足です。

 

(3)例外2:但し、標準語語彙で「ん+タ行音(「ち」・「つ」含む)」は、対応する秋田弁でも、濁らずそのまま「ん+タ行音(「ち」「つ」含む)」となります。

例:産地[さん]→さん つんん→つんん 寒天[かんん]→かんん 竿燈[かんう]→かん

説明:現代秋田弁の使用状況からの補足です。

 

(4)例外3:但し、標準語語彙で、「『きくしすちつひふぴぷきゅしゅ』+タ行音(「ち」「つ」含む)」なら、秋田弁でもそのまま「『きくしすちつひふぴぷきゅしゅ』+タ行音(「ち」「つ」含む)」です。「きくしすちつひふぴぷきゅしゅ」とは、つまるところ無声母音になりうる音ですね。

例:北[き]→き ふつ→ふつ ふぇ(太い)→ふ 人[ひ]→ひ

説明:現代秋田弁の使用状況からの補足です。…といっても、『秋田方言』p91に言及があるところからして、『秋田方言』の筆者は気づいていたようですけれど。

おわりに

 以上で今回の秋田弁の勉強はおしまいです。

 

 それでは今回はこの辺で。へばなー。

 

 

 

 

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