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第86課(新版):主な慣用表現④:疑問詞を用いた慣用表現

第86課:主な慣用表現④:疑問詞を用いた慣用表現

 みなさん、こんにちは。

 

 今回は、疑問詞を用いた慣用表現について勉強します。

疑問詞を用いた慣用表現

 

疑問詞を用いた慣用表現:決まり文句なので丸暗記しよう。

①相手に直接訪ねる「どうした(んだ/んだい)?」→「なした?/なにした?」

②当事者でない他の人に尋ねる「どうしたんだ?」→「なしたあんだ?/なにしたあんだ?」

③強調のニュアンス「(一体全体)どうしたの?」→「なしたな?/なにしたな?」

④独り言的な疑問「どうしたんだろう。」→「なした(あんだ)べ。」「なにした(あんだ)べ。」

⑤伝聞で何かの様子がおかしいと聞いて「どうしたって?」→「なしたど?/なにしたど?」

どうした(んだい)?体どこかが悪いのか?→なした/なにした?体どっか悪りあんだが?

彼はどうしたんだ?泣いているが。→あえなしたあんだ/なにしたあんだ?泣でだンども。

どうしたの?そんな難しい顔をして。→なしたな/なにしたな?そんだ難し顔して。

騒がしいなぁ。どうしたんだろう。→騒か゚しごど。なした(あんだ)べ/なにした(あんだ)べ

…え?太郎がどうしたって?→…なに、太郎なしたど/なにしたど

説明:様子がいつもと違っているのを見て、「どうした?」等と、その理由を尋ねる時の決まり文句。様子が違う本人に尋ねるなら①の形を、事情を知っていそうな他の人に尋ねるなら②の形を使う。③は本人でも他の人でもいいが、①②に比べて、「一体どうしたの?」という、やや強調気味のニュアンスを伴う④は標準語同様、独り言的に使う。別に人に尋ねているわけではない。⑤は何かの様子が違うらしいと聞いた時、その詳細を尋ねる表現。

 

練習問題1:次の()内の標準語を、秋田弁にしてみよう。

(1)(どうしたんだ)?そんでぁに震えで。(2)かー、あの子(どうしたの)?どっか体悪りなンだが?(3)おや、太郎、めぁ(どうしたの)?顔色悪りや?(4)あの、先生…。―ん?(どうしたんだい)?何が質問でもあるあんだが?(5)(どうした)?緊張するが?(6)あの子(どうしたんだ)?怒ってだえんだンども。(7)かー、あえ(どうしたんだ)?ずっと泣でだや?(8)あえ最近来ねぁな。(どうしたんだろう)。(9)次郎大丈夫ンだべが。―なに、次郎(どうしたって)?

 

⑥「いくらなんでも」→「なんぼなんだたって」

いくらなんでもそれは度が過ぎるだろう!→なんぼなんだたってそえンだばおがンだべ!

練習問題2:次の()内の標準語を、秋田弁にしてみよう。

(1)(いくらなんでも)そえンだばねぁべせぁ。(2)(いくらなんでも)そえンだば言ー過き゚ンだ。(3)(いくらなんでも)そえンだばおがしや?(4)(いくらなんでも)その言ー方ンだば酷ンでな。

 

⑦「なにか(強調)」「なにかしら(「なにか」の強調)」→「なにがかにが」

何か/なにかしら問題が起きたのだろう。→なにがかにが問題起ぎだあんだべ。

なにか/なにかしらやってみたいことない?→なにがかにがやってみでぁごどねぁ?

説明:「なにがかにが」は「なにが」の強調表現で、標準語の「なにか」「なにかしら」の意。但し、使い方はちょっと注意。「なにがかにが」は、普通、「なにがかにが楽しごどさねぁば…」「なにがかにが資格ねぁば…」のように、「なにがかにが+(連体修飾語)+名詞」というふうに、名詞とセットになった使い方がなされる(同格の用法)。この時の「名詞」と「なにがかにが」の関係は同格。要は「なにがかにが」=「名詞[なにがかにがの具体例]」である。

 

練習問題3:次の()内の標準語を、秋田弁にしてみよう。

(1)(何か)事件さ巻き込まえだえんだ。(2)人間誰ンでも(何かしら)秘密抱えでるもんだ。(3)(何か)人さ自慢するにい、良ー経験あれば良ンども。(4)(何か)元気なるえんだ報せねぁ?

 

⑧標準語のあらゆる「どうだ?」「どうであるか?」→「なんとンだ?」 活用変化可能

⑨体や物の具合・提案への賛同を尋ねる「どうだ(い)?」「どんなもの/感じ/具合/調子だい?」→「なんたンだ/なんたもんだ?」文脈が限定される上、この二つの形のみ。なお、「なんたンだ」と「なんたもんだ」に意味や用法の違いはない。

私も行くけど、どうだ?君も行くか?→俺も行ぐンども、なんとンだ?めぁも行ぐがは?

どうなんだろう。それでいいのだろうか。→なんどンだあんだべ。そえンでいあんだべが。

どうだ?体の調子よくなったか?→なんたンだ/なんたもんだ?体塩梅ぁいぐなったが?

どうだい/どんな感じだい?書き辛いか?→なんたンだ/なんたもんだ?書ぎ辛れぁが?

説明:⑨の二つは使う文脈が限られる。具体的には、(A)体の具合、(B)物の使い勝手や薬などの効き目、(C)食べ物の味等への感想、(D)提案したことへの相手の賛同を「どうだ?」と尋ねる文脈で使う定型句で、形も上記以外にない。対して⑧の「なんとンだ」は、「なんたンだ」「なんたもんだ」の意味全てをカバーできる上、上記の文脈以外の「どうだ?」の意味も表せる。しかも⑧の方は「なんとンであった?」等のように活用変化も可能である。要は⑧は決まり文句ではなく、「どう」=「なんと」、「である」=「(ン)だ」でできた、標準語のあらゆる「どうである」系の疑問にそのまま対応する表現であり、応用が利く

 

練習問題4:次の()内の標準語を、秋田弁にしてみよう。

(1)ほら、薬っこ飲めは。…(どうだい)?体調子いぐなったが?(2)んだらめぁも一緒に行げばいねぁが。(どうだ)?んたが?(3)この筆(どんな感じだい)?使いやしぐねぁ?(4)餅っこ焼だンども、(どうだ)?柔っけ過き゚ンだが?(5)餅っこ焼だンども、(どうだ)?めぁも食ゎねぁが?(6)こえンだげ片付ければ、(どうだ)?流石にあどものねぁぐさねぁべ?(7)学校(どうだっ)た?(8)んー、(どうだっ)たっけが?さっさっ、忘えでしまったは。(9)(どうで)もいは。

 

練習解答:

練習1:(1)なした(2)なしたな(3)なしたな(4)なした(5)なした(6)なしたあんだ(7)なしたあんだ(8)なしたべ/なしたあんだべ(9)なしたど 注:「なした」は、いずれも「なにした」でも可。

練習2:(1)なんぼなんだたって(2)なんぼなんだたって(3)なんぼなんだたって(4)なんぼなんだたって

練習3:(1)なにがかにが(2)なにがかにが(3)なにがかにが(4)なにがかにが

練習4:(1)なんたンだ(2)なんたンだ(3)なんたンだ(4)なんたンだ(5)なんたンだ(6)なんと(7)なんとンであっ(8)なんとンであっ(9)なんとンで 注:「なんたンだ」は、いずれも「なんたもんだ」でも「なんとンだ」でも可。「なんとンだ」との違いは本課の説明参照。

終わりに

 以上で、今回の勉強はおしまいです。

 

 ではまたこんど。へばな。

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お知らせ
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