秋田弁講座第8課:動詞②:「五段活用動詞②」:「イ音便・促音便・撥音便」
みなさん、こんにちは。
今回は、秋田方言講座第8回ですね。
秋田弁の五段活用動詞の音便について勉強します。
1.イ音便・促音便・撥音便とは?
標準語の五段活用動詞の中には、連用形の後ろに「た」「て」「たり」が接続する時、例外的に、「書いた」「書いて」「書いたり」のように、連用形が「い」になるものと、「待った」「待って」「待ったり」のように、連用形が「っ」になるものと、「死んだ」「死んで」「死んだり」のように、連用形が「ん」になるものとがある。
「い」になる現象をイ音便、「っ」になる現象を促音便、「ん」になる現象を撥音便という。これらの音便変化を起こす動詞についても、標準語と秋田弁との間に相違はなく、相互に完全に一致している。
「っ」になる促音便:取った→取った 笑った→笑った
「ん」になる撥音便:死んだ→死んだ 飛んだ→飛んだ
練習問題1:次の()内の標準語を、秋田弁にしてみよう。
(1)(笑った)顔もめんけごど。(2)(立ったり) (座ったり)忙しごど。(3)こごンで(有った)。(4)もー少し(待って)けれ。(5)(歌って)みでけねぁ?(6)(死んだ)人どご悪りぐ言うな。(7)球(飛んで)来た。(8)友達ど(遊んだ)。(9)もの(運んで)来い。(10)舌(噛んだり)して大変であった。
2.秋田弁のイ音便
先ほど、秋田弁と標準語は、音便については相互に完全に一致していると言ったが、実はこれには一つだけ誤りがある
すなわち、秋田弁のイ音便は、標準語のイ音便とは微妙に違う。以下、その対応関係を明らかにするので、これには注意して欲しい。
①「-いた」→「-だ」。必ず「だ」と濁る。
書いた→書だ 聞いた→聞だ 咲いた→咲だ
②「-いたり」→「-だり」。必ず「だり」と濁る。
書いたり→書だり 聞いたり→聞だり 咲いたり→咲だり
③「-いて」→「-で」。必ず「で」と濁る。
書いて→書で 聞いて→聞で 咲いて→咲で
④「-いだ」→「-んだ」。
急いだ→急んだ 泳いだ→泳んだ すすいだ→すすんだ
⑤「-いだり」→「-んだり」。
急いだり→急んだり 泳いだり→泳んだり すすいだり→すすんだり
⑥「-いで」→「-んで」。
急いで→急んで 泳いで→泳んで すすいで→すすんで
説明:要するに①~③では、イが抜け、④~⑥では、イがンに変化する。標準語でイ音便を引き起こす動詞は、秋田弁では例外なく①~⑥の規則に従った変化をする。難しいことは考えずに、覚えてしまおう。雑作ない。
練習問題2:次の()内の標準語を、秋田弁に翻訳してみよう。
(1)花(咲いた)。(2)手紙(書いた)。(3)(炊いた)ご飯冷めでしまった。(4)顔さ(付いた)ご飯粒(5)戸(叩いて)がら開げれ。(6)笛っこ(吹いて)けれ。(7)ピアノ(弾いたり)笛っこ(吹いたり)してる。
練習問題3:次の()内の標準語を、秋田弁に翻訳してみよう。
(1)昨日ンだば散々(騒いだ)。(2)川ンで(泳いだ)(3)(研いだ)包丁。(4)(つないだ)手ど手(5)(急いで)けれ。(6)(担いで)来い。(7)包丁(研いだり)水ンでコップっこ(すすいだり)してる。
3.音便を起こさない時の「た」「て」「たり」
秋田弁では、上記のような音便を起こさない場合は、動詞型活用の用言に「た」「て」「たり」がつくと、「だ」「で」「だり」と必ず濁る。
起きた・起きて・起きたり→起ぎだ・起ぎで・起ぎだり
開けた・開けて・開けたり→開げだ・開げで・開げだり
注意:但し、「き」「し」の直後にある時だけは濁らない。
来た・来て・来たり→来た・来て・来たり
した・して・したり→した・して・したり
練習問題4:次の()内の標準語を、秋田弁に翻訳してみよう。
(1)見(た)、来(た)、勝った!(2)寝(たり)起ぎ(たり)し(て)過こ゚し(た)。(3)せっかぐ探し(て)見つけ(て)来(て)も、まだすく゚ねぁぐし(たり)するねぁ。
練習問題解答:
練習問題1:(1)笑った(2)立ったり・座ったり(3)有った(4)待って(5)歌って(6)死んだ(7)飛んで(8)遊んだ(9)運んで(10)噛んだり
練習問題2:(1)咲だ(2)書だ(3)炊だ(4)付だ(5)叩で(6)吹で(7)弾だり・吹だり
練習問題3:(1)騒んだ(2)泳んだ(3)研んだ(4)つなんだ(5)急んで(6)担んで(7)研んだり・すすんだり
練習問題4:(1)だ・た(2)だり・だり・て・た(3)て・で・て・たり
終わりに
以上で、今回の秋田弁講座の勉強はおしまいです。
それでは、この辺で。へばなー。
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