コラム5:古い言葉を残す樺太アイヌ語~なぜ和人は古く「アイヌ」を「えぞ」と呼んだか~
皆さん、こんばんは。齶田浦蝦夷です。
今回は、コラム4でちょこっと触れた「樺太アイヌ語」をヒントに、和人はなぜアイヌを古く「えぞ」と呼んだのか、について、私見を述べたいと思います。
さて、今回話題にする樺太アイヌ語ですが、実はこの言語、コラム4で挙げた「ばっけぁ」の例に限らず、北海道のアイヌ語だけ見てると分からないことを教えてくれることがあります。
例えば、和人は嘗てアイヌのことを「えぞ」と呼んでいました。それはアイヌという言葉からは似ても似つかぬ言葉ですが、実は樺太アイヌ語の中には、「アイヌ」とほぼ同じ意味を持つ古い言葉として「エンチゥ」という言葉が残っています。
アイヌ語では清音と濁音を区別しないこと、アイヌ語の「ウ」と「オ」の響きが日本語では区別しづらいこと、そして秋田弁を含む東北方言では「ン」は非常に短く発音されがちなことを踏まえれば、「えぞ」という言葉がどうやってできたか想像がつきます。
すなわち、古アイヌ語「エンチゥ」「エンヂゥ」→東北民に「エンヂォ」に聞こえる→東北民「ン」を縮めて「えンじょ」と言い始める→都会民「えぞ」と見なしてこれをアイヌの呼称とする。
といった具合です。アイヌ語の特徴と秋田弁を含む東北方言の特徴を理解していれば、非常に単純な話になりますね。
以上、「えぞ」の語源に関する持論でした。
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