コラム2:アイヌ語と日本語
みなさん、こんにちは。
今回は、アイヌ語と日本語の関係についてご紹介します。
2.アイヌ語と日本語の関係
さてさて、お次は日本語とアイヌ語の関係についてお話しましょう。
さきほど申しました通り、日本語とアイヌ語は、発音・語法・語彙と全面的に全く別でございます。
なので基本、両者には関係なんて皆無なのですが…何分地理的に隣合わせでしたでしょ、ヤマトとアイヌって?
そのため、実はアイヌ語の単語の中には、一部日本語の影響を受けたと思しき言葉もわずかながら存在します。
それについてちょちょいと説明いたしましょう。
日本語から来てると思しきアイヌ語例
①「メノコ」
メノコ、意味、想像できますか?
アイヌ語では、「女性」「女子」を表す言葉として、アイヌ語の基礎語彙中の基礎語彙として成立しております。
ふむ、女子を表す言葉で「メノコ」…はっ、「女[め]の子[こ]」か!と気づいた人はどこまでいるでしょうか。はい。この言葉は恐らくかなり昔の日本語の「女の子」から来た借用語です。
日本の古典なんか読んでも、「おのこ[=男]」「めのこ[=女]」という言葉に出くわすことがあるでしょ?多分それがアイヌに伝わって基礎語彙になったんじゃないすかね?
因みにアイヌ語で「男の子」を指す言葉は「オッカヨ」です。惜しい!「オ」違いだ!…なんてね、一文字しか合ってねすな。
②「パスイ」「カムイ」
同じくアイヌ語の常用語彙です。意味、想像できますか?
まず簡単な方から考えましょうか。「カムイ」。これは創作物などでも目にすることがあるので分かるのではないでしょうか。そう、「神」を表すアイヌ語ですね。
「パスイ」も、「カムイ」―「カミ」の対応関係に注目して意味を当ててみましょう。「ムイ」が「ミ」になる。じゃあ「スイ」は?「シ」ですね。
となれば答えは「ぱし」。ってちょっと待てい。「ぱし」ってなんだ?そんな日本語ないぞ?と戸惑った方も多そうですね。
これを読み解くには予備知識が必要です。実は古代の日本語では、「はひふへほ」は「ふぁふぃふふぇふぉ」、更に遡れば「ぱぴぷぺぽ」で発音されていた、という説があるのです。
となると?「ぱ」=「は」だから…「パシ」=「ハシ」ですね!そう、アイヌ語の「パスイ」とは、「ハシ」、すなわち食事で使うあの「箸[はし]」を指す言葉なのでした!まぁアイヌ民族的には、パスイは食事の時のみならず、儀式などでも使う重要な祭具なのですが。
③「カワリネ」
これは、純粋な借用語ではないですね。「ネ」は日本語の助詞「に」に相当する言葉です。
なので、対応する日本語は「カワリニ」…そう、「代わりに」。「カワリネ」は、「~の代わりに」を意味するアイヌ語なのです。
「ネ」というアイヌ語と結合して使われているところからして、もはやすっかりアイヌ語として取り入れられた言葉なのでしょうね。
④「マチヤ」
これはまさに純粋な借用語。「町」を意味するアイヌ語です。
街は、古い日本語では「町屋」とも言いますよね。というかパソコンで「まちや」と入力すればそのまま出ますし、そこまで古い言葉というわけですらないのでしょう。
その「町屋」が、そのままアイヌ語に取り入れられて「マチヤ」という一つの単語になっているのでしたー。ちなみに、アイヌは本来狩猟採集民です。人が集まるところは本来集落=コタンと言います。それとは別個に、町のことをマチヤというわけですよ。
以上で、アイヌ語に取りいれられたと思しき日本語の説明はおしまいです。よく見かける言葉としてはこの程度ですね。
他に気になるものがあると言えば、「手」を「テㇰ」と言ったりする程度ですかね?でもこの辺になると本当かどうか怪しいので、当サイトではスルーします。
終わり
以上にて、コラム2も終了です。
次回のコラムは、お待ちかね、秋田弁とアイヌ語の関係についてお話しします。
それでは、今回はこの辺で。へばなー。
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