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第4課:「っ」「ん」「ー」の混在

第4課:「っ」「ん」「ー」の混在

 みなさん、こんばんは。

 

 今回は、川柳を通して、「っ」「ん」「ー」が同時に存在する時は、伸縮自在性はどう変わるか、について学んでいきたいと思います。

今日の川柳

 それでは今日の川柳を詠んでみましょうか。

 

第一句

かことので

はえぐなおせでゃ

ひぎはじめ

 

第二句

かっこんとー

のめばすっきり

ひぎはじめ

 

第三句

かぜだえだ

かっこんとのんで

やすむがは

 

 もはや川柳と言っていいかすら分からない、風情の欠片もない句になっていますが、まぁ勉強のための川柳なので気にしないでいただきたい。

 

 ともあれ、解説に入っていきます。

 

第一句解説

 第一句は以下のようなものでした。

 

かことので

はえぐなおせでゃ

ひぎはじめ

 

 今、これを当サイト表記に直すとこうなります。

 

かっこんとーのんで

はえぁぐなおせでぁ

ひぎはじめ

 

 変わったのは、1行目の「か・っ・こ・ん・と・ー・の・ん・で」(9音)→「かことので」(5音)ですね。

 

 「っ」「ん」「ー」の省略という、これまで習った現象が、一度に一気に登場しています。

 

 秋田弁の「っ」「ん」「ー」の省略というのは、このように、同時に起きることがよくあります。詳しい説明は後に譲り、次の川柳を詠み進めましょう。

 

 なお、「かっこんとー」というのは「葛根湯」と書きます。風邪の引き始めの時などによく飲まれる漢方薬の名前ですね。

 

 私自身は漢方薬派でもなんでもないのですが、ではなぜそんなマニアックな言葉をわざわざ使ったかと言いますと、秋田弁の「っ」「ん」「ー」の現象を説明するのには最も都合のよい言葉だったからです。なにせ1単語内に「っ」「ん」「ー」すべてありますからね。

 

 

第二句解説

 次に第二句の解説です。第二句は以下のようなものでした。

 

かっこんとー

のめばすっきり

ひぎはじめ

 

 こちらの句は、当サイト表記でもまったく同じになります。

 

 注目して欲しいのは、「かっこんとー」の部分です。第一句では「か・こ・と」(3音)と「っ」「ん」「ー」すべてが省略されていたのに、第二句では「か・っ・こ・ん・と・ー」(6音)とすべてが長い形になっています。

 

 すべてが長い場合(第二句)とすべてが短い場合(第一句)、この二つの場合があることを確認できたところで第三句を読み進めましょう。

 

第三句解説

 では第三句の解説に入ります。

 

 第三句は以下の通りでした。

 

かぜだえだ

かっこんとのんで

やすむがは

 

 これは当サイト表記だとこうなります。

 

かぜンだえんだ

かっこんとーのんで

やすむがは

 

 音の長さで変化した部分は、、1行目「え・ん・だ」(3音)→「え・だ」(2音)と2行目「か・っ・こ・ん・と・ー」(6音)→「か・っ・こ・ん・と」(5音)ですね。

 

 ですが今回注目して欲しいのは、やはり2行目の「かっこんと」の部分です。

 

 なんとこの第三句におきましては、「かっこんとー」でも「かこと」でもなく、「かっこんと」です。

 

 「っ」「ん」「ー」をすべて短縮させた第一句「かこと」とも、すべてを長く言った第二句「かっこんとー」とも違う形ですね。

 

 これは一体どのような規則があってこうなっているのでしょうか?それとも秋田弁の「っ」「ん」「ー」には、本当になんのルールもなく、自由気ままに長く言ったり短く言ったりしてよいのでしょうか?

 

 その答えは、NO(ノー)です!

 

 自由自由と言っても、ほんのちょっとしたルールはひそかにあるもんなのですよ。以下、それについて説明いたしましょう。

 

秋田弁の「っ」「ん」「ー」の長短のルール

 これまで、この川柳で学ぶ伸縮自在の秋田弁第1課~第3課では、秋田弁の「っ」「ん」「ー」というのは、話者が自由に長くしたり短くしたりしてよいのだと言いました。

 

 それは9割方正しいのですが、今回の「かっこんとー[葛根湯]」のように、1つの単語の中に「っ」「ん」「ー」が混在していたり、或いは「こんぺーとー[金平糖]」とか「ぎんなん[銀杏]」のように、1つの単語の中に「っ」「ん」「ー」が複数存在する時には、ちょっとした制限がつくのです(逆に言えば、そういう場合以外は文字通り自由気ままに長めたり短くしたりできる。)

 

 具体的には、以下のような制限が付きます。

①その単語の中の「っ」「ん」「ー」の長さは、

a.すべてを長くするか

b.すべてを短くするか、

のどちらかになる。

②但し、語末の「ん」「ー」だけは、どんな時でも自由に短くしてよい。

 

 つまり、どういうことかと言いますと、以下のような感じです。

 

例1:「かっこんとー[葛根湯]」の場合

①の規則があるから、

a.「か・っ・こ・ん・と・ー」(6音。すべて長い。)

b.「かッ・こン・とー」(3音。すべて短い。)

のどちらかの形で使う。

 

でも、②の例外があるから、語末を短くして、

 

c.「か・っ・こ・ん・とー」(5音。語末の「ー」だけ短い。)

 

という形も許される。

 

例2:こんぺーとー[金平糖]の場合

①の規則があるから、

a.「こ・ん・ぺ・ー・と・ー」(6音。全部長い。)

b.「こン・ぺー・とー」(3音。全部短い。)

のどちらかの形で使う。

 

でも、②の規則もあるから、

c.「こ・ん・ぺ・ー・とー」(5音。語末の「ー」だけ短い。)

 

という形も選べる。

 

例3:ぎんなん[銀杏]の場合

①の規則により、

a.「ぎ・ん・な・ん」(4音。みな長い。)

b.「ぎン・なン」(2音。みな短い。)

のどちらかを使う。

 

しかし②の規則があるから、

c.「ぎ・ん・なン」(3音。語末の「ん」だけ短い。)

という形でもOK.

 

 

 

 いかがでしたでしょうか?理解できましたでしょうか?

 

 こういう「っ」「ん」「ー」が同時に存在したり、複数あったりする単語というのはそんなに多くはない気がしますが(実際、例の「秋田弁de川柳」の投稿作品を見ても、目下こういう例は見当たらない)、一応そういうルールはあるよーってことを頭の片隅においていただければと思います。

 

終わりに

 以上で今回の勉強は終わりです。

 

 まぁ秋田弁の長短の中でも、かなりマイナーなルールですから、川柳とかの投稿の際に使っていいかは分かりませんが。

 

 ちなみに秋田弁の「っ」「ん」「ー」というのは、実際にはそれぞれ短縮されやすさというのは微妙に違いがあるようです。

 

 例の川柳の投稿作品や普段耳にする秋田弁会話から安易に推測する限りでは、「っ」の短縮はかなりよく使われ、「ー」はぼちぼち、「ん」は稀かなぁって感じですかね。

 

九十近い我が家の祖母辺りならほぼ全部短縮して言うのですが、よその人の会話を聞く限りでは、世代が下れば下るほど短縮は起こり辛くなるという印象を受けます。

 

 ともあれ、今回はこのへんで。へばなー。

 

(蛇足:第一句~第三句語義解説)

第一句

かっこんとーのんで(葛根湯を飲んで)

はえぁぐなおせでぁ(早く治せよ)

ひぎはじめ(風邪の引き始め)

 

第二句

かっこんとー(葛根湯)

のめばすっきり(飲めばすっきり)

ひぎはじめ(風邪の引き始め)

 

第三句

かぜンだえんだ(風邪のようだ)

かっこんとのんで(葛根湯を飲んで)

やすむがは(休むか)

 

語釈:

はえぁ…早い。速い。

例1:疲れだべ?はえぁぐ休めは。

訳:疲れたろう?早く休みなさい。

例2:あの人足速えぁあんだど。

訳:あの人は足が速いのだそうだ。

 

でぁ…よ。標準語の、尻下がりに言う「~よ」。

例1:少しぐれぁ気ー遣ってけれでぁ。

訳:少しくらい気を遣ってくれよ。

例2:今更そんたごど言わえだたって、なんともさえねぁでぁ。

訳:今更そんなことを言われたって、どうしようもないよ。

 

えんだ…ようだ。

例1:今日午後から雨降るえんだ。

訳:今日は午後から雨が降るようだ。

例2:あの人も行ぐえんだ喋してあったや?

訳:あの人も行くような話をしていたよ?

 

がは…「が」と同義。文末に付ける。

例1:あど寝るがは?

訳:もう寝るかい?

例2:まず、そえンでもいがは。

訳:まぁ、それでもいいか。

 

関連ページ

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