助動詞①「れる」「られる」
みなさんこんにちは。
今回からはとうとう日本語の難関ともいうべき項目「助動詞」に入っていきます。
今日は助動詞の中、受け身「れる」「られる」を学んでいきたいと思います。
助動詞とは?
まずは用語解説からいきましょう。助動詞とは、動詞を助ける言葉、…といっても意味不明ですね。
まぁ簡単に言うとあれですよ。「わから-ない」「しり-たい」「言っ-た」の「ない」「たい」「た」などのように、動詞の後ろにくっついて動詞に更なる意味を加える用言のことです。
用言なので動詞や形容詞、形容動詞などと同じく「活用」します。故に勉強するとなればその活用表を覚えなければならなくなるわけですね、面倒なることこのうえなし。
まぁでも、活用の方は実はそんなに身構えなくても問題ないですよ。助動詞の活用は、①動詞と同じ活用をするもの、②形容詞と同じ活用をするもの、③形容動詞と同じ活用をするもの、そして④独自の活用をするもの、の四つのタイプがありますが、そのほとんど①~③のいずれかのタイプとなります。
なので今まで勉強してきた動詞、形容詞、形容動詞の活用さえ覚えていれば、いちいち新しく活用を覚える必要など(ほぼ)皆無なのです。
それに、秋田の方言の助動詞の場合、その意味内容についても、対応する標準語とまったく同じというものが九割九分を占めているため、実質的に「対応する単語を覚える」ということだけしてれば九割型助動詞の勉強は制覇できたりします。
…まっ、前置きはここまでにしておいて、ちゃちゃっと勉強に入りましょうか。案ずるよりも生むが易し、ちゃちゃっと片づけて秋田の方言をマスターしていきましょう。
助動詞「れる」「られる」復習
さて、本題に入りますが、今回勉強するのは標準語の「れる」「られる」に相当する秋田の言葉です。
接続も使い分けも標準語と同じなので、そのまま対応する秋田の方言の単語に置き換えればいいのですが、とりあえず標準語の助動詞から思い出しましょうか。
まずは、「れる」「られる」の接続ですが、どちらも動詞型用言の未然形につきましたね。
で、次にその使い分けを思い出しましょう。つまり、何に対して「れる」を使い、何に対して「られる」を使うかという点についての復習ですね。
標準語の「れる」「られる」は、両者は動詞の未然形につく点は同じですが、動詞の型に応じて使い分けをするのでしたね。
「れる」は五段活用動詞に付きましたね。「書か-れる」「読ま-れる」「知ら-れる」などと言った感じです。
それから、サ行変格動詞のうち、「-じる」で終わらない方、つまり、普通の「-する」で終わるものにも付きました。その結果「される」という形になるのでしたね。「される」「懇願される」「応援される」「マークされる」等等です。
で、今度は「られる」の方ですが、「られる」はその他の動詞、つまり、上一段動詞・下一段動詞、カ変動詞、そしてサ変のうちの「-じる」で終わる動詞につきましたね。
上一段の例を挙げれば、「見-られる」「起き-られる」「飽き-られる」等等。下一段は「寝-られる」「開け-られる」「立て-られる」等等。で、カ変は「来られる」。サ変の「-じる」で終わるものは、「信じ-られる」「禁じ-られる」「軽んじ-られる」「疎んじ-られる」等となります。
以上が「れる」「られる」の使い分けです。ここまで、覚えている人はいましたでしょうか。なかなか標準語の文法って忘れるっていうか、そもそも子供の頃よくわかんなかったからそのままひきづってよくわかんないって人も多いかもしれませんね。
なにせ中学時代までに勉強する内容らしいですから、標準語の文法って。高校ですらないんですよ。忘れてる方が普通っすよ、多分。
ともあれ、標準語の解説はここでおしまい。結論を言うと、秋田方言の場合も、接続は未然形で、使い分けは、五段とサ変「する」系統には「れる」を、「られる」はそれ以外の動詞の型に、というものです。
以下、近代秋田方言について見て行きます。
近代秋田方言の「れる」「られる」
ご覧の通り、下一段活用動詞と全く同じように活用します。
近代秋田方言助動詞「れる」「られる」活用表
「れる」の活用 |
「られる」の活用 |
接続可能な言葉の例 |
|
未然形 |
-れ |
-られ |
-ねぁ[ない] |
連用形 |
-れ |
-られ |
-でぁ[たい] |
終止形 |
-れる |
-られる |
省略 |
連体形 |
-れる |
-られる |
-どぎ[時] |
仮定形 |
-れれ |
-られれ |
-ば |
命令形 |
-れれ |
-られれ |
省略 |
将然形 |
-れろー |
-られろー |
省略 |
説明:標準語との違いは、命令形・将然形の二形に見られます。
命令形:
-れろ→-れれ 例:やられろ→やられれ 注意されろ→注意されれ
-られろ→-られれ 例:見られろ→見られれ 避けられろ→避げられれ
将然形:
-れよう→-れろー 例:やられよう→やられろー 注意されよう→注意されろー
-られよう→-られろー 例:見られよう→見られろー 避けられよう→避げられろー
注意:なお、秋田方言の「れる」「られる」に「自発」の用法、すなわち「自然と~される」という意味を表す用法はありません。「春が感じられる」「そういうことなのだと思われる」などの「れる」「られる」の用法はないので注意してください。
おわりに
以上、助動詞「れる」「られる」の勉強はこれにて終了となります。
いかがでしたか。ちゃんと覚えられましたでしょうか。
助動詞あたりまでくると、秋田方言の勉強よりか、標準語のそれを忘れてて大変だ、ということの方が多くなるかもしれませんね。
まぁ一応当サイトでは標準語の対応語に関する説明もさらっとしておきますので、それを参考にしつつ勉強していってみてください。
それでは今回はこの辺で。あばやー。
対応する現代秋田弁記事:こちらとなります。
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